違う見方

新しい時代の始まり。複数の視点を持つことで、情報過多でややこしい現代をシンプルに捉えるための備忘録的ブログ。考え方は常に変化します。

悪い奴らにはビジョンがある!

シェアハウス「かぼちゃの馬車」を事業展開する(株)スマートデイズが破綻し、そのシェアハウスの個人オーナーに融資をしていたスルガ銀行のズサンな融資実態が話題になっている。

 

スルガ銀、シェアハウス融資2000億円 個人向けの2割  2018/5/15

スルガ銀行はシェアハウスの家賃で副収入を得たい会社員らに、土地や建物の購入費用を融資。平均融資額は1億円を超え、1人で5億円超の融資を受けた人も含まれるという。同行はシェアハウス融資の実態を開示してこなかった。

 

 

当初、私はそもそも融資が実行されなければ何事も始まらなかったと言う意味でスルガ銀行が一番悪いのではないかと考えた。

 

 

しかし、いろいろ検索できる範囲で調べると、被害者には申し訳ないがおもしろい実態(謎)が出てくる。

 

結論を最初に書くと、大学生がターゲットになっていて、大学生がターゲットということはその親や舞台としての大学も間接的なターゲットになるということで、構造的には奨学金と同じであると感じられるということ。

 

日本では、少数のグローバルに活躍してる人や企業と、多数のドメスティックな分野で生きるしかない人や企業に別れている。

 

そして、そんなドメスティックな環境で発生しているのかもしれないシフトについて話をしてみたい。

 

なお、類似案件もあるだろうがシェアハウスに限定して話を展開したい。

 

 

このシェアハウスに関しては登場人物が4種類いる。

 

・事業の企画者(=スマートデイズ)

 

・事業への参加者(=物件オーナー=土地所有者=被害者)

 

・金融機関(=スルガ銀行)

 

・物件入居者

 

そして、背景としてシェアハウスという存在への認知が必要になるし、そのイメージも大切になる。

 

Google Trendsで検索可能な2004年以降でシェアハウスと検索すると、

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2012年の末から急上昇している。

 

この時何があったかというと、2012年の10月からフジテレビでテラスハウス_(テレビ番組)が始まったのだ。

 

私はこの番組を見たことは一度もないが、話題になっていることは知っていた。

 

シェアハウスを舞台にして、恋愛を絡めた若者のライフスタイルを発信する番組になっていたことで、シェアハウスでの生活に幻想を与える効果があったであろうことが想像できる。

 

ちなみに、共同で部屋を使うルームシェアとシェアハウスを比較すると、

 

 

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テラスハウス放送後を境に、ルームシェアとは全く違うことばとして定着した印象がある。

 

これは何を意味するかというと、若者はシェアハウスに強く興味があるという理解を世間に植え付けたということだ。

 

このようなシェアハウスに対するイメージと、国土交通省がガイドラインを定めたりという流れを受けて、表舞台の事業として登場してきた。

 

参考: 国交省の通達受け各シェアハウス団体に動き 日本シェアハウス・ゲストハウス連盟 2013年08月19日

 

 

この流れを受けて登場するのが㈱スマートデイズ(旧名スマートライフ)で社長は大地則幸氏。

 

この人物が取材を受けた記事が下記で、プロフィールもよく分かる。

 

「家賃0円・空室有」でも儲かる不動産投資
脱・不動産事業の発想から生まれた新ビジネスモデル
株式会社スマートライフ 代表取締役
大地 則幸氏(おおち のりゆき) 2016/9/23

 

このインタビューの中におもしろいことばがある。

 

現在、入居者は約3,000名います。この人達には長く住んでもらおうとは考えていません。いち早く卒業(退居)してもらいたいのです。

 

究極の夢になりますが、日本から家賃が無くなればいいと思っています。正直、全ての家賃0円は難しいかもしれませんが、せめて20代の人は家賃0円にしたいです。

 

 

別に言ってる内容に問題があるとは思わないが、大きな特徴は、入居者としてのターゲットは若者で回転率を重視しているということだ。

 

モデルになっているのは学生向けの賃貸住宅にも感じられる。

 

そして、この大地則幸氏が社長になる前の創業社長こそが黒幕と言われてるようで、名を佐藤太治氏と言い、謎の人物とされている。

 

こんなブログがあった、真偽は不明だが策士っぷりが伺える。

 

佐藤太治と私 2009/5/13

かつてその流通形態から地方都市に爆発的なフランチャイズ店を 

増殖させたビデオ安売王。 

その店頭に並ぶ一般作を制作するために社長の佐藤太治氏は当時 

「元気が出るテレビ」「浅草橋ヤング洋品店」の演出で奇才ぶりを 

発揮していた(「お笑い北朝鮮」の前後ぐらい)テリー伊藤氏に 

プロデュースを依頼。 

そして、当時ディレクターとして伊藤班にいた高橋雅也や高須信行と 

いった面々を一般作の制作に当たらせ、佐川一政と爆笑問題による 

対談や一軒家プロレス、障害者ドキュメントといった過激作を 

リリースしていた。

 

 

 

シェアハウスに誰よりも早く目を付けた人物は、お金の臭いに敏感な人達で、ある属性の人間の心理を知り尽くしている連中でもある。

 

ある属性とは、一言で言うと"若さゆえのルーズ"になるだろう。

 

 

2012年に設立された㈱スマートライフ(当時)の業績は、

 

第1期 売上  44,500万円

第2期 売上 204,700万円

第3期 売上 1,886,900万円

第4期 売上 2,634,900万円

 

 

また、不動産事業のように見せているが、

 

最初に少し触れた「就職まで面倒をみる」という事です。入居者に就職先の会社を紹介し、無事に採用されれば紹介先の企業からバックマージン(紹介手数料)をいただくというビジネスモデルです。つまりは有料職業紹介業です。

これは僕の勤めている会社もそうですが、人材派遣会社の一つの柱事業です。

そう、株式会社スマートライフは、不動産会社でもあり人材紹介会社でもあるのです。

 

引用の出典はどちらも

http://jft-corp.com/2017/02/21/post-67/

 

 

 

次に役者として登場するのがスルガ銀行だが、スマートライフ(当時)が急成長していた2014年にこんな記事がある。

 

 

逆境でも強いスルガ銀行に見る、地銀の生き残る道とは? ZUU online編集部
2014/06/03

地域金融機関は、今、大きな岐路に立たされています。

 

多くの銀行が法人開拓、法人向け融資に力を注ぐ中で、スルガ銀行は個人向け融資に力を入れています。個人ローン比率は2014年3月期において85.7%と突出しており、貸出残高も年々増加しています(2014年3月期24,705億円)。

 

つまり、スルガ銀行は手間であったとしても、「1社に1億を1%で貸す」よりも「100人に100万円を10%で貸す」方を選んだというわけです。

 

 

法人需要を拠り所にしてきた大手企業にとって、リテール(小口)のビジネスは数をこなす必要がある分だけ大変さが大きくなる。

 

おそらく、小口なんかちまちまやってられないという空気が漂っていただろう。

 

地元ではNo.2のスルガ銀行にとって個人客で活路を見出すことは必須なので、目指すのは客単価を上げる方向にならざるを得なくなる。

 

 

スマートライフ(当時)とスルガ銀行の思惑とタイミングが上手く一致したのが2014年なのだ。

 

 

 

しかし、その頃から不動産業界ではサブリース問題が少しずつ語られるようになり始めていた。

 

 

今は良くても、いづれうまくいかなかなくなるという、半分儲かってる人に対するヤッカミのように語られていたが、このサブリースのターゲットになったのは土地資産を所有する人々で、立地の良い不動産を所有する人から順番に営業の声がかかっていた。

 

初期に取り組んだ人は、シミュレーション通りの結果が比較的長期に渡り実現するだろうが、サブリースが良いぞと後から取り組む人ほど条件は不利になる。

 

逆に言うと、最初に成功事例を見せられるから、そのシステムを過大評価するようになる、本当は個別案件として独立して考慮されなければいけないのに。

 

 

この状態は、年々悪化していった。

 

 

シェアハウスもこの影響を受けたのだろう、スマートライフは2017年㈱オーシャナイズと資本業務提携をしている。

 

シェアハウスが行き詰まる最大の理由は、入居者が集まらないことがあり、これはシェアハウスというライフスタイルが否定されてるのではなく、実際のシェアハウスでの生活と持ってるイメージが一致しないからだろう。

 

今年に入り、社長交代が行われたが、新社長は㈱オーシャナイズの社長でもある菅澤聡氏が着任したが、4月3日に㈱オーシャナイズの取締役CFOの赤間健太氏が新社長になっている。

 

この㈱オーシャナイズは、菅澤聡氏が大学在学中に立ち上げ、大学と大学生と企業をつなぐビジネスを展開していた。

 

そして現在も目指すところは変わっていないようだ。

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https://oceanize.co.jp/service

 

 

大学を中心にして、大学を目指す中高生から大学を卒業してすぐ位の層の人々をターゲットにしている。

 

それ自体が悪いわけではないが、将来を担保にしたビジネスと見える。

 

日本というのは不思議な国で、若いということに過剰に反応するところがあるし、根強い青春信仰みたいなものがある。

 

もし今の自分が青春真っ只中だと自認する人がいたら、夢を語る話には要注意だ。

 

"自分には未来がある"と信じたい気持ちと"実際の自分"とのギャップに悩むのは、青春の常だ。

 

こんなギャップに悩むと、無意識に得することを考え出す。

 

得をすることで、ギャップを帳消しにしようと考えるようになる。

 

そういう人たちの気持ちがわかってる人が罠を仕掛けている。

 

 

(株)スマートデイズ  〜民事再生から一転、破産〜 :東京商工リサーチ  

 

 

 

罠に引っかかりたくなければ、納得できるまで調べるしかない。

 

 

 

こうやって考えると、今年起きた"はれのひ"事件や、"てるみくらぶ"のように若者が使ったり、若い頃から使い続けてるものの中に潜む、持ってるイメージと実際のギャップが大きい時に、人は騙されるという当り前の事実に気付く。

 

 

最も弱い立場の人間ほど、最も賢く立ち回る必要がある!