この本は、12のキーワードに基づき構成されている。
今回はそのキーワードの10〜12について、書いてあることを踏まえ、私が感じたことを書いてみたい。
10.TRACKING 追跡する
インターネットは、世間に出回る情報量を激増させ、それに連れて発展したデジタルデバイスやその周辺技術は、あらゆる物や事をデータ化することを可能にしている。
そのことがデータの解釈にも大きな影響を及ぼしている。
昔は、アンケートや聞き取りに基づいてデータが作られることも多かったが、そんな頃は、アンケートや聞き取りの総数が多いとデータの精度が高いとされていたが、統計学の理屈を当てはめてテレビの視聴率調査のように少ないサンプル数でも精度の高さは保たれると言われ続けてきた。
ちなみに、視聴率調査のサンプル数は首都圏で600とウィキペディアには書いてある。
インターネット登場以降は、通信の側からデータの収集が可能になったため、サンプル数でいうと100万、1000万単位以上のデータも収集可能になった、いわゆるビッグデータと言われるものだ。
ビッグデータ自体が、解釈に幅のある存在になっているが、ビッグデータの真逆の特定の誰かだけのデータも取得可能になっている。
この特定の誰かは、概ね自分自身と置き換えて使われることが多く、主に健康医学情報として扱われる。
また監視カメラのように、一つ一つはピンポイントのデータだが、他のカメラのデータと合わせて、データに連続性も求めたり、思わぬ発見が得られたり、それ以前だと仮説の域を出ないことを実際に示すことが出来るようにもなっている。
人類にとって、これらの追跡できるようになったデータは、つい最近まで無かったものなので、逆に言うと無くても困らないものとも言える。
無いからいらないと取る人もいるし、あるんだったら活用しようという人もいるだろう。
この追跡できるデータを支配する立場になると、そんなつもりがあってもなくても権力者になれる。
この追跡できるデータの価値に気づかない者は、自分の人生においても主人公になれないかもしれない。
データをどう活かすか、活かさないのか、この違いはますます大きくなるのかもしれない。
情報やデータが増えるということは、発信の増加に受信が対応することができていることであり、それらが計測できるようになったということを意味してる。
デジタル化された情報やデータの特徴として上げられているのが、
・動きたがる
・他の情報やデータとリンクしたがる
・リアルタイムで気付かれたがる
・複製され、模倣され、コピーされたがる
・メタ情報になりたがる
※メタ=情報やデータが、別の意味を持つ情報やデータになること
現代社会の情報やデータには、匿名性という特徴がある。
匿名性には、嘘や無責任という悪い面と、実名では発信できない隠れている真実や特ダネという、匿名発信という術がなければ、無かった事にされてしまうことを知ることが出来るという良い面もある。
現代の情報やデータは、自ら動くことを求め、そんな情報やデータは追跡されながら、ますます増殖拡散していく。
情報やデータは、知っていれば得をする時代から、知っているだけでは得にならない時代になった。
次世代の情報やデータが、どのような存在になるのかは、まだ誰にもわからない。
11.QUESTIONING 質問する
ウィキペディアには、嘘や間違いがあるという人は多い。
そういう人が、信じられるのは紙に書かれた辞書や百科事典だと答えたら、きっとバカにされるだろう。
ウィキペディアを見た人ならばわかるのが、そこに書かれた内容を自力で知ろうと思ったら一体何百冊の本を読まなければ辿り着けないかということだ。
もし間違いがあったとしても、その間違いは高いレベルの話なのだ。
ウィキペディアに関してはそう思う私だが、Google Mapに関しては、リアルタイムで進化していく様子を見ながら、これは誰の役に立つのだろうかと思っていた。
そう考える大前提として、地図帳が身近にあることと、目的地は事前に確認するもので、行きながら確認するものではないという先入観があったから。
しかし、最近改めて気付くのが、手持ちの地図帳の発行年月日の何と旧いことかということ。
しかも、"昔住んでたあの場所はどうなってるのだろうか"と思った時などに、Google Mapがなければそもそも知ることは不可能であることに気づく。
膨大に増えた情報やデータを追跡することが可能になったおかげで、従来の価値観では全く価値を感じなかったことに価値を見いだせるようになってきている。
利用者として使っているだけだったら、それはまさに"なっていく"ものだが、作った人にすれば"してやったり"であり、時には予想外を生み出しているだろう。
『それが分かって何になる?』が、これからのキーワードになるかもしれない。
良いことばかりではなく、犯罪にも利用されるだろう。
『それが分かって何になる?』は、今後『そんな事が起きるとは思わなかった』や『ありえない!』を増やしていくことだろう。
情報やデータが増えるたびに、同じ数だけあるいはそれ以上に疑問も増えているはずだが、そこに気付くのはほんの一握りの人だけだ。
これも、養老孟司先生が言うところの"バカの壁"と共通しそうだ。
12.BEGINNING 始まる
ごく一部の人の間で始まることの多くは、例外的な存在としてスタートする。
変人の行動といわれたり、変人の数が徐々に増えるとやがて"オタク"と呼び方が変わっていったり。
また金持ちだから出来ることとしてスタートするもの、例えば車を所有するようなことは、普及の拡大とともにコストが下がり誰の手にも届くようになっていく。
偶然のように見えることも、裾野が拡大すると、やがて必然に思えてくる。
そこまでいくと日常に必要な存在になっていたり、違和感を感じない存在になっていたりする。
"なっていく"ものは、"始まっていく"ものになる。
新しい時代のルールと思いきや、これは私の好きなロシアのことわざそのものだ。
起こることは避けられないこと。
Чему быть, того не миновать.起こるべきことは起こる。必然的にそうなるようなことは、どうやっても回避不可能。
https://ja.wikiquote.org/wiki/ロシアの諺
紹介した『<インターネット>の次に来るもの』の原題は『The Inevitable』、つまり"不可避"という意味。
過去が未来につながることは誰でもわかるが、実は未来も過去につながっているかもしれない。