わざと下品な書き方をする、そのほうがニュアンスが表現できるから。
営業(職)という言葉の響きは、古い表現をすると、「ドサ回りの演歌歌手」的な場末感がある(あった)。
文系の場合、とりあえず営業というのが学校を卒業するとあてがわれる職種だった。
取り柄のない奴はスタートが営業だった。
本当は、間違った考え方だが、ほぼすべての企業が同様だったからビジネスの慣習として成立した、今風に言えば日本的ガラパゴスだ。
営業に配属される殆どが、内心はイヤだったはずだが、しょうがないと納得もしやすかった。多くが憧れたのは、企画や開発という部署だった。
営業職には、修行的な意味合いもあっただろう。
しかし、お客とのコミュニケーションが問われるという意味では、高度なテクニックも要求される。
だから、「出来る営業」と「出来ない営業」の差がつく。
お世辞を言えば務まるってもんじゃない。
しかし、出来る程度に応じてノルマ(目標)を課せられという意味では、心理的負担は同じだった。
また、最低でも月に一回訪れる締め日に間に合うように挙績を求められるのでプレッシャーも大きい。会社や業種によっては、毎日が締め日というところもあるだろう。
以前は、ほぼ男の世界だった営業職にも女性が大勢進出している。また取り扱う商品に対して技術的な説明が必要なものが増えてくると、理系じゃないと務まらない営業がでてきた。商品の取扱に高度な専門性が必要になると、超できる人以外営業できなくなる。
こうして、営業も高度化し進歩してるが、先に話した締め日のプレッシャーはなくならない。
だから愚痴も多くなる。
愚痴の中には正論もある。
そんな正論の愚痴が、意外な人から出て来始めてる。
ノーベル賞受賞者だ。
今年、ノーベル医学生理学賞を受賞した大隅良典さん(東工大栄誉教授)の発言が注目されている。基礎研究についての発言だ。
「『役に立つ』ということが、とても社会をだめにしていると思っています。科学で役に立つって『数年後に起業できる』ことと同義語のように使われることが、とても問題だと思っています」
大隅先生は、ノーベル賞取ったからこの言葉が教訓に聞こえるけど、ノーベル賞を取らない状態での発言だったら、ただの愚痴になるところだった。
でもやっぱり、先端を行く科学者にも、締め日のプレッシャーが課されてるんだ。
ジャパン・アズ・ナンバーワンって80年台半ばの話だと思ってたが79年だった。

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この時期以降バブル景気の頃まで、経済力で世界一と言われた日本だが結局世界に通用するイノベーションの類は起こせず、独自のものは皆ガラパゴス。
ところで、大隅先生より以前の段階でも、日本人のノーベル賞受賞者は減ると言われていた。
6年前のこの記事の中では、「理科離れ」がノーベル賞を遠ざけると書いてある。
しかし、こうも書いてある。
もちろん、一面的に「理科離れ」を懸念する人々に対する反論もなくはない。
たとえばITの分野に目を移せば、プログラミングやソフトウェア開発のジャ
ンルによい人材が多く、少なくとも“理系離れ”を感じさせる現況にはない。
つまり理系でも応用分野へは、大勢参入している。
ここでも締め日が関係している。
研究開発の分野も、需要があるのは、締め日が設定できる分野なのだ。
締め日が設定できない基礎研究は、”研究したけりゃノーベル賞取ってこい ”と言う状態なのだろう。
でも、ノーベル賞取ってもツライかも!
営業の締め日に悩んだことのある人が、皆気付く真実がある。
「締め日」って、お客には関係ないよね!!
締め日に合わせて行動して、お客と気まずい雰囲気になった経験がある人は、結構いると思う。
締め日って一言で言うと、経理処理上のシステム。
便利で都合がいいからシステム化されたが、人間の感情には馴染まないとこがある。
営業でよく言われた言葉にこんなのがある。
「今成約している客は、3ヶ月前に種まきした客だ」と。
ノーベル賞の場合、注目されてから取れるまで20〜30年掛かると言われてる。
おそらく転職が当たり前になり始めた頃、新人を採用し育成に時間と費用をかけるのと、高い報酬を天秤にかけた時に、高い報酬を正当化させる力を持っていたのが「即戦力」という価値観だろう。
そうやって即戦力の精鋭集団を築いたつもりが結局、
売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出しているで知られてる28の法則を、確認しただけだ。
高くなった人件費を下げることも出来ず、人材にコストをかけられないことを、即戦力募集ということばでごまかし続けた結果が今の日本だ。
即戦力として通用するために、個人レベルでやってることが多分ピントはずれかも。
価値観を少し変えるというのは意外に難しい。
しかしキッカケがあれば、価値観を180度反転させることは案外出来るものだ。
180度反対の価値観とは何かを考える時期かも。