最近立て続けに、企業の人材不足や採用の困難さを取り上げる記事が目立つ。
記事だけ見てると、景気が良くなり、社員の給料もさぞかし上がってるのかなという感じを受けるくらいだ。
しかし、これらの記事に対するコメントをみると、「会社に都合が良い低賃金労働者が不足してるだけなんでしょ」という意味合いのものが多い。
正社員不足、企業の45%に=IT関連で深刻―帝国データ調査 8/24(木)
業種別では、ソフト開発など「情報サービス」が9.7ポイント増の69.7%と最も高く、「家電・情報機器小売」や「放送」、「運輸・倉庫」も60%台だった。
「人手不足倒産」が日本を襲い始めた…「求人難倒産」、前年比2倍のペース 2017.08.21
東京商工リサーチによると、今年7月の人手不足関連倒産は24件(前年同月は28件)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。内訳は、代表者死亡や病気入院などによる「後継者難」型が16件(同27件)、「求人難」型が7件(同1件)、「従業員退職」型が1件(同0件)だった。
休廃業・解散の背景に高齢化と後継者不足があるのは明らかで、人手不足の問題はこれからが本番といえそうだ。
ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2017/08/post_20249.html
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昨年の10月、電通の高橋まつりさんの自殺が急にクローズアップされた。
その理由は、2016年9月30日に自殺が労災認定されたからだ。
劣悪な労働環境で過酷な労働に晒されることを「ブラック」と呼ぶことが世間に定着し、タイトルにブラックと付いた書籍が出回り始めたのが2008年頃と言われてる。
日本では、過酷さに耐えることは修行と解され、一種の登竜門的な扱いを受けることがあるが、高橋まつりさんの一件が一気に流れを変えた。
電通という日本のトップ企業がブラック認定された。
政治や経済の中枢との絡みも多い電通は、少々の理不尽さなどものともしない地位を築いていたように思われていたが、この件では行政が電通を突き放した。
行政が世間の空気を読んだのかもしれない。
だとすれば、逆忖度が起きたのだ。
この件を境に、ブラック企業の経営者は蔑まれ始めた。
またブラック企業の従業員の中には、辞めたいのに辞めさせてもらえない人々がいたが、行政の窓口が機能を取り戻し始めたし、ハイエナのような弁護士がブラック企業相手の訴訟をターゲットにし始めたことで、「No」が言いやすい環境が整備されてきた。
こういう一連の流れが、上記の人材不足に繋がっているのだろう。
1年前だったら、嘘の待遇条件で募集し、入社したら不満を受け付けないという手法をとっていた企業が、嘘がつけなくなったら誰からも相手にされなくなったということだろう。
また、かつての流通業界における問屋のような中間搾取の仲介企業が、人材分野には本当に多い。
これらの企業に取られてる意味のないお金が余りにも高額なため、社員の給料が増やせないという側面もあるようだ。
新卒不足で「1人100万円」でも採れない 2017年08月25日
従業員200人弱のあるIT企業は2018年卒の採用戦略を見直し、大手就活サイトの利用を中止したという。
「これまでは大手のサイトを通じてたくさんのエントリー数を集めて、その中から選考するスタイルでしたが、数年前から見向きもされなくなりエントリー数が激減しています。実際、受験者も少なく、採用数に達しなかった。就職情報サイトには300万円近く支払っていますが、あまり効果がないので利用をやめました。今年は中小のSNSサイトのスカウトメールを使って直接学生と接触したり、全国の大学や研究室を訪問したりしています。地道な活動ですが、リアルな場所で顔をつきあわせたほうが学生の人柄を知ることができ、採用にもつながりやすい」(採用担当者)
マイナビの調査では、採用費のなかで「就職サイトなどの広告費」の割合は40%を超えている。
メルカリなどの一部の企業では、社員募集を縁故で行ってるところも出てきてる。
信頼できる人間が奨める人間は、信頼できるだろうということであり、縁故で採用された人には、信頼を裏切ってはいけないという気持ちも芽生えるということを期待してのことだ。
起きてることの根本は同じで変わってないのだが、見え方だけが全く違ってきた人材や求人を巡る現象という話。