仲介事業という存在は、もともとは売り手と買い手の取引に正当性を担保するために第三者が介入することで、面倒だが後々のトラブルの発生を減らすためのもので、本来は裏方だ。
その裏方が、表舞台に出ることが増えている。
人材分野に仲介というものが導入されたことで、人材派遣が活性化し、その流れで雇用の流動化が表面上活性化したが、普及とともに質が低下し始めた。
質の低下は競争の激化が招いたのだが、仲介業の質とは本来競争原理に晒されないことで担保されているので、起こるべくして起きている。
仲介が表舞台に出てくる背景には、目的がお金になってることが挙げられる。
本来の仲介は、安全に滞りなく取引を完了するためのものだが、現代では当事者として関係する全ての立場の人(企業、組織)が取引単位で発生する手数料や差益を目的にしている。
だから、取引の頻度が増え、取引のサイクルが短くなる。
舞台は流行り廃りがあり、その都度変わる。
最近では、先物取引からFXへ移り、現在仮想通貨が最も注目されている。
そこでは、心理的な駆け引きが中心になっている。
つまり、やることは何でもかまわないのだ。
そんな心理とは、
「ブラック中のブラック業界」損失を取り返したい気にさせた悪質業者 先物取引市場凋落のワケ
「利益が出ると顧客は証拠金(業者に預けている元手)を引き揚げてしまう。それを避けるため、むしろ顧客に損失を出させ、お金を取り返したいという心理につけこんで、“追(お)い証”(追加証拠金)をつぎ込ませるということが行われていた。営業方法も金銭欲を刺激するようマニュアル化されていた」
※字を拡大し下線を引いたのは私。
先物では、損失を取り返したいという心理だったが、現在では、こんなに儲けてる人がいるんですよと攻めの気持ちを煽るように展開されている。
ここ数日で、Coincheckの顧客資産流出が大きな話題になっているが、これも仲介にまつわるトラブルだ。
仮想通貨の信用は仲介業者の信用:『アフター・ビットコイン』 2018年01月28日 16:16 池田 信夫
コインチェックの事件が話題になっているが、これは仮想通貨のセキュリティの問題ではなく、仲介業者の盗難事件にすぎない。コインチェックは全資産をインターネットからアクセスできる「ホットウォレット」に置き、複数の電子署名で確認する「マルチシグネチャ」も導入していなかったというから、銀行の裏口をあけっぱなしで営業していたようなものだ。
仮想通貨流出 ずさん管理、次々露呈 野口悠紀雄・早大ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の話
今回のケースは、仮想通貨取引そのものの問題ではない。現金に言い換えれば、日銀券の取引システムではなく、現金輸送車が狙われ、その安全対策に問題があったということだ。
そう、この事件は現金輸送車が襲われたような事件なのかもしれない。
そして、そんな強奪事件の現場が、リアルから仮想空間へのシフトが起きているのだ。
強奪事件とは本来下記のようなものだ。
平成の「3億円事件」! ニセ警官、駅前で白昼堂々…重さ百数十キロ、組織的犯行か 2016/12/15
福岡市博多区のJR博多駅筑紫口付近の路上で今年夏ごろ、貴金属買い取り店に運搬中の約6億円相当の金塊(百数十キロ)が、警察官を装った複数の男らに盗まれていたことが14日、捜査関係者への取材で分かった
この事件の表面化以降、現金取引が原則の金塊取引に用いられる多額の現金を狙った強奪があったが、あっという間にその手口が広まり、それと同時に対策もなされているのだろう。
金儲けをしたい人や企業や組織が、盲点や不備を狙って、次々と舞台を変えているが、目的もその動機を支える心理も全く変化していない。
「もっと儲かって良いはずなのに、もう少しで損を取り戻せそうだ」という身の丈に合わない被害妄想に取り憑かれてしまっているのだ。
取引するためには、法的に仲介者を必要とする取引と必要ない取引があるが、後者が圧倒的に多い。
しかし、仲介者は必要ないが、事情通のアドバイスを求めることは増えている。
アドバイスとは、失敗しない方法であり、選択肢が複数あれば、どちらが良いかという答えであったりで、そのアドバイスは、リアルな知人から得てもでもネット上の評判でも構わないが、自分なりの一定の基準は設けている。
つまり、知らず知らずのうちに自分自身の基準のつもりで、他人の基準でものごとを判断することが増えている。
逆に言うと、皆が仲介者化しているのだ。
現代の有能なビジネスマンとは、事情通としてのアドバイスという仲介実績が多いということであり、そのアドバイスの影響力が高い人のことである。
その時々でアドバイスに一定の傾向が見られるようになり、その傾向に多くの人が振り回される、振り回された結果はピンキリで、凄く良い目に会う人もいれば、悲惨な目に遭う人もいる。
似た傾向に基づき行動する人が多ければ、負の要素として生じる盲点や落とし穴の傾向も顕在化するので、そこに落ちる人も多くなる。
『プロにお任せ!』という言葉があるが、流行り廃りの陳腐化のサイクルが早い現代では、プロを名乗る人はいつプロになったのだろうかということを考える必要がある。
現代社会では、本を1冊読んだだけでプロを名乗ってる人が大勢いる。
この程度であれば、アドバイスは求めるまでもない。
現代社会は、アドバイスしたがる人と、それより遥かに多いアドバイスを求める人で溢れている。
都心の少し大きい本屋に行って、売られてる本のタイトルを見てるとターゲットが誰なのかが見えてくる。
そのくらい、似たような傾向で世間は流れてる。
迷ったときは自分で考える癖を付けたほうが良い、現代は誰でも持ってる情報も知恵も大して差がないと思うくらいで丁度良い。