違う見方

新しい時代の始まり。複数の視点を持つことで、情報過多でややこしい現代をシンプルに捉えるための備忘録的ブログ。考え方は常に変化します。

『ここ』は、どこ?

こんな話があったと最近になって知った。

 

『トランプ氏が大統領選挙戦を戦ってる最中に、象徴的な発言とされた「メキシコの国境に壁を築く」というのは、移民が争点になることに掛けた一種のバクチ的な炎上戦略であった』と。

 

発言の主は、トランプ氏の選対側近だったナンバーグ氏で、暴露されたトランプ氏から訴えられた。

 

トランプ氏が訴えたのは、知られたくないことを知られたから。

 

しかし、この作戦は見事に功を奏した。

 

 

トランプ陣営で本気で大統領選に勝とうと考えていた戦略立案者のマットブレイナード氏が取った戦略は、『これまで選挙に行ったことがない人で、トランプ氏に共感する人の発掘』だった。

 

ブレイナード氏が取った方法(戦術)は、第三者を通じて入手した2008年と2012年の大統領戦でオバマ大統領の選対本部が使っていたデータベースを元に、投票に行かなかった人々に「トランプのために投票に行って欲しい」というメッセージを電話や戸別訪問で投げかけた、それだけらしい。

 

これまで選挙に行かなかった人々は、大きな不満を抱えていて、その不満の元を辿っていくと移民の存在に行き着くという点に着目したのだ。

 

選挙のプロたちが、票にはならない人と切り捨てていた層にアプローチするために炎上戦略が採用されたのだ。

 

これまで選挙に行かなかった人々は、「メキシコの国境に壁を築く」とトランプ氏が発言したときに、「ああ、自分たちのことを分かってくれている」という強い共感を感じたらしい。

 

しかし、そういう事実は選挙期間中は、大きく取り上げられることはなく、なぜトランプが支持されるんだと疑問を持たれていた。

 

アメリカの話だが、こういうことは先進国に共通のことかもしれない。

 

色んな分野で、表立って言われてることと、実際の間に、大きな乖離があるかもしれない。

 

活路を見出すためには、そんな乖離に気付くことが肝心だ。

 

そして、"強い共感"を得る必要がある。

 

 

 

炎上にも、戦略が求められる。

 

本番前に、試行錯誤も必要になる。

 

ちなみに、トランプ氏に「メキシコの国境に壁を築く」と言わせたナンバーグ氏は、大統領選に立候補する1年前から、どういう発言が支持層に"ウケる"かをチェックしていて、最も熱狂的な反応を得られたのが「メキシコの国境に壁を築く」だったらしい。

 

日本でも、炎上はしばしば起きるが、その中には戦略的な炎上や試行錯誤としての炎上があるという目で見ることも、世間を知るための良い練習になるだろう。

 

ここまで書きながら思い出したのが、クイズ番組でおなじみの林修先生。

 

2009年から始まった東進ハイスクールのCMで、気がついたら有名人の仲間入りを果たした名言を放っていた。

 

「いつやるの?」

 

「今でしょ!」

 

このCMのおもしろいところは、見ている人の中にムカついてる人が多かったという点だ。

 

「今でしょ!」の林先生が笑っていいともに出演 「林修 むかつく」で検索した人でてこいwww

 

 

「今でしょ」だけが独り歩きするが、林先生はこのように日頃心がけていたらしい。

 

「今の僕は、生徒を単に『感服』させるだけでなく、『行進』させることができているのだろうか?」

 

「いつやるか? 今でしょう!」の誕生秘話

 

 

炎上してるように見えるのは、ネガティブな取り上げ方をされるからで、目立ってるようでいて、実はノイジーマイノリティで少数派ということが多い。

 

林先生にムカついた人の多くは、教室で教えてる林先生を知らない人で、実際の林先生は生徒に支持されてるから人気講師になれている。

 

ところで、炎上してる場合は、自分自身や自身の発言が世間で大きく話題になってることを実感してるだろうから、どのくらい炎上してるかを確認したりしないだろうが、これと反対に世間には自分はどう取り上げられてるのだろうかということを気にする人達がいる。

 

そういう人々は、自分で自分を検索する。

 

そんな作業は、エゴサーチと呼ばれてる。

 

基本的には、評判や評価を気にするから行う行為だが、このエゴサーチを独特な方法でやっている芸人がいる。

 

一発屋芸人と呼ばれる"ジョイマン高木"だ。

 

今朝ラジオでジョイマン高木の話題を聞いて、早速検索してみた。

 

「ジョイマンはどこに行った?」 ジョイマン「ここにいるよ」※ジョイマン高木 特別寄稿 2018/5/21

僕は一発屋と呼ばれている。世間から「ジョイマンは消えた」と言われるようになって久しい。10年前にテレビにたくさん出て以来、今ではほとんどテレビに出ていないからだ。僕の顔を、僕の衣装を、僕のネタのステップを正確に思い起こせる人は少ないだろう。

 

ツイッターでエゴサーチをすれば「ジョイマンどこいった?」そんなツイートをよく見る。僕はそのツイートひとつひとつに「ここにいるよ」と返信する作業を5年ほど続けている。僕はここにいる。どこから来ようが、どこに行こうが、いつだって僕は“ここ”にいる。そうか。僕のSPOTは“ここ”なんだ。

 

今朝のラジオで言っていたが、このジョイマン高木の「ここにいるよ」は、当初まさか本人から返事が来るとは思ってないので、新鮮な驚きと感動を与えたようだが、やがてジョイマン高木からの返事欲しさに「ジョイマンどこ消えた」とツイートして返事を求めるというパターンが出来上がったという話だった。

 

"炎上""エゴサーチ"も、インターネットの普及で多くの人々と直接的、間接的にコミュニケーションを取ることができるようになったからこそ生まれた一種のコミュニケーションだと言える。

 

 

 

 

トランプ氏が、大統領になれたのは、それまでいなかったことにされていた人々の「俺たち(わたしたち)は、ここにいる」という声なき声を拾い上げたから、林先生が言った「今でしょ」は迷ってる場合ではないぞという思いを込めた「ここだ」と同じだろう。

 

多くの人が、行きたい場所としての目標や夢を持っているかもしれないが、出発地点としての今いる「ここ」がわからなくなってるように見える。

 

 

どこにいるかわからないけど、「ここにいるよ」と声を上げてる人が大勢いる。

 

 

 

トランプ氏に関する話の多くは、この本で知った。

 

総力取材!  トランプ政権と日本 (NHK出版新書)

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