今までと同じことをしているのに、そのやり方が通用しなくなることがある。
自然とそうなっていくものから、法律が変わるから起きる変化まで様々あるが、これらの変化は、ゲームのルールが変わるのに似ている。
世の中のルールが緩やかに変化しているという話を集めてみた。
「出版社との二人三脚、もう出来ない」 個人作家が生き残るには 漫画家・森田崇さんの場合
(1)収益面を考えると、出版社は不要と感じたため、
(2)長期連載を続けるため、だったという。
「一人一人の編集者は良い人だが、出版社というシステム自体が今の時代に合っていないのでは」と疑問を呈する。
「今は売れる人とそうでない人の二極化が激しく、落ち着いて長く連載できていた作品を受け入れる土壌がない。出版社と作家の利害関係が変わるのは当たり前で、(出版社と)信頼感のあるパートナーとしての二人三脚はもうできない」(森田さん)
「編集者は、部数などの数字周りの話を作家に言わないんですが、そもそも編集長以外は把握してないんですね。ベテランの人でも編集長経験がないと知らなかったりするケースもあり、これは驚きました」
特別なことができる『スペシャリスト』を目指すべきか、何でもできる『ゼネラリスト』を目指すべきかと天秤にかけることが多いが、どうやら両方できなければいけない時代になってるようだ。
スペシャリストとゼネラリストは、従来相互依存の関係だった。
スペシャリストは現場のプロで、ゼネラリストは管理・マネージメントのプロであることが多く、分担が成立してるときには機能していた。
しかし、組織に所属していても、成果や評価が個人に帰属するようになると、すべての人が個人事業主化する。
つまり、なんでも自分でできる必要が出てくる。
上記の引用記事で言うなら、出版社はスペシャリストである作家を外注し、編集者はゼネラリストとして機能すべきだが、ゼネラリストとして機能するために必要な関連情報にはアクセスできていない、これには社内秘なども関わっているだろう、結果としてゼネラリストがゼネラリストとして機能できる環境が減っている。
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私のように、ファッションに特に興味がなく、買う時はリアル店舗を使う人は、実はZOZOTOWNを理解できていないかもしれない。
私は、ZOZOをブランドだと思っていた。
しかし実際には、ネット上でのファッションモールであり、プラットフォーマーなのだ。
上記の出版界の話に例えるならば、ZOZOは出版社の役割なのだが、果たすべき役目は同じだ。
ZOZOTOWN運営担当者必見!売り上げUPと粗利確保出来る運営方法とは? 2018/03/19
・自店だけでなく競合も含め売れ筋が分かる
・現在・過去も含めどのような商品が売れていたのか
・全店舗の売り上げ、販売個数
・発送や在庫管理に関するアラートが出て、それ通りに行えば基本的な業務が行える
出版の編集者が数字を把握してないから作家に有効なアドバイスができないのと違い、勢いのある世界では数字の把握は必須であることがわかる。
プラットフォーマーは、スペシャリストを上手に活用するために、ゼネラリストとしての実力をスペシャルにしようとしている。
この記事には、最後にこんな一文がある。
今回はZOZOTOWNでの運営方法をお話ししましたが、本当に売れているブランドはモールにも出さず、自社サイトだけで売っています。
売れてるブランドが何をやっているかは、私達の目には表面的なことしか見えてない。
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おもしろいのが、民泊に関して。
ルールの変化というよりも、法律が変わった。
民泊を事業として行う場合、事前登録、届け出を行わなければならないと新しく定めた民泊新法が6月15日から施行された。
民泊新法が6月15日施行へ 民泊を始める人が注意したい3つのポイント
建物が制限されることになった。
民泊に使用できる宿泊施設は、現在居住用として所有、あるいは賃貸しているが、何かの事情で使用していない部屋や一戸建てに限定されることになる。
ここまで限定しているのには、資金が豊かな業者が民泊用に賃貸物件を建て、それを宿泊施設とすることを危惧しているからである。民泊の大きな狙いは、現在社会問題となっている空き家の解消でもあるからだ。
民泊新法では、事業者は別に管理者を置かなければいけなくなった。
民泊新法では、届け出をして住宅宿泊事業(民泊)を営む人を住宅宿泊事業者(事業者)と位置付ける。また、この事業者の他に管理・運営を行う住宅宿泊管理者(管理者)も置かなければならない。
このことで、民泊は儲けるためのハードルが上がったので、事業としてやめる人が増えてるようだ。
民泊撤退の流れで家具や家電がフリマで売られまくっている「家電家具1部屋まるごと3~7万円の売出しが溢れてる」
民泊を事業として当て込んだ人々が、うまくいかないと見るや、一気に損切りに向けて動き出すというのは、ある意味賢い行動だが、もっと賢い人々がいる。
実は、撤退代行業者という存在があるらしい。
フリマで格安で処分する背景には、撤退代行業者の価格が高いからという理由があるのだ。
これも、ツルハシビジネスだろうが、民泊の撤退をお任せくださいという事業があるのだ。
"撤退代行"と検索すると、
いろんなサイトを見て事情がわかった。
民泊撤退というカテゴリーが顕在化したのは2017年に入るとすぐ、この時期何があったかというと、以前から宿泊者のマナーが悪くて、近隣とトラブルを起こす、部屋を汚す、ということが多く何かと苦労が多い業界となっていた。
清掃業者が、民泊物件の清掃を請け負わないということも2017年に入ると起き始めていたようだ。
民泊利用の宿泊者は増えても、トラブルや余計なコストが発生するという想定外も多く、気苦労が多いのだ。
民泊新法の改正が公布されたのが施行の1年前なので、遅かれ早かれ撤退はブームになると手ぐすね引いていただろう。
この民泊の実態を知って、フランチャイズでコンビニ経営することに似てる気がした。
不動産ビジネスは、増え続ける空き物件をなんとかしたいという思いと、民泊は客が増えているという事情の間で、損得勘定が激しく動いているのだ。
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取り上げた3つの話題に共通してるのは、エンドユーザーであるお客がきちんと存在してること。
お客探しが、何よりも大変なので、お客がいる分野は常に激しい競争がある。
しかし、お客がいない分野に従事してる人の目には、青い芝生に見えるはずだ。
お客がいるところが、青い芝生に見える人が見失う視点がありそうだ。
民泊の場合、ブランディングは部屋が作り上げるとすれば、民泊撤退で家具や家電が放出されるのは、ブランド解体そのものと言えるし、今後参入する事業者のブランディングは部屋をどう演出するかで決まるのだろう。
特需があるような場合以外では、結局ブランディングに成功しなければ、おこぼれにしか預かれないだろう。
ゲームのルールが変化してるように感じるときは、個人であろうと組織であろうと、自らのブランディングを変化させるタイミングでもある。