本棚にある古い本を見ると、巻末の著者の名前の横に住所が併記されていて、「これはおそらく個人宅だよな〜」としか思えない住所が表示されていることがある。
こういうことを調べる時にTwitter検索は便利だ。
昭和50年代の本読んでたら巻末の著者紹介に著者の住所載ってて時代を感じる。プロ野球名鑑にも選手の住所載ってたんだよなー
— 幣束 (@goshuinchou) September 11, 2018
白洲正子『明恵上人』に続いて、明恵について今度は史学的なアプローチの本を読もうと手を出したのが田中久夫『人物叢書 明恵』(吉川弘文館、1961年)。私が今見ているのは、1988年の新装版第一刷ですが、巻末の著者略歴に住所が載っているんですよね。時代とはいえ驚き。 https://t.co/a8GZiWlTiO
— 柏木ゆげひ (@kashiwagiyugehi) June 20, 2018
昔の本の奥付にはよく著者の住所が記されていました。探偵作家クラブの年鑑の巻末には会員の住所録が掲載されていたくらいで、作家は住所を隠すものだという発想はなかったようです。時代は下って平成初期になっても読売年鑑とか朝日年鑑には現住所が掲載されている例多数。ネット普及前のことです。
— 安眠練炭 (@aNmiNreNtaN) August 25, 2015
昔は、著者の住所や電話番号は、本の巻末奥付に入ってたんだよね。
— 加藤AZUKI@「忌」怖い話Echo怪談 (@azukiglg) May 10, 2014
著者の元に押しかける輩が出るようになって、版元が事実上のエージェントになり、著者の住所や連絡先が奥付に載ることはなくなりましたけども。つまり、その時点で「版元が窓口であり代理人」なんだよなあ。
@ecriture_zero 「ペンフレンド」という言いかたもしてましたね。本の巻末に著者の住所が掲載されていたのも覚えてます。「個人情報」なんていう概念は昭和の時代、全くありませんでしたよね。私の頃の卒業アルバムには、巻末に卒業生全員の住所と電話番号が書いてありましたよ。
— motoichi (@million7000) September 1, 2011
有名人が連絡先や自宅住所を公開していた時代には、「弟子にしてください」という突撃ドラマがあったという話はよく聞いたものだった。
個人情報が安易に公開されていたのは、警戒する理由がなかったからだろうが、有名人宅に泥棒が入る場合などには利用されていただろう。
しかし、近所の人なら誰でも知っている情報なので、泥棒が目を付けても誰も何も疑問を持たなかったのだ。
世間で、個人情報が漏れてることを気持ち悪いと感じ始めたキッカケは、ダイレクトメールによる販促資料が送り付けられるようになってからだ。
「こんな会社知らないのに、どうしてウチの住所が分かったんだろう?」と感じるようになったからだ。
個人情報の取り扱いだけではなく、説明が必要な情報の伝達の主力が郵便だったということも大きかったのだろう。
ダイレクトメールが届くことを「気持ち悪いね」と高校生の頃に家族で話したことがあることを覚えている。
入学や卒業など進学に関する情報に基づいてダイレクトメールが届くということは名前と住所と生年月日の情報が知られているのだが、これらは日常生活では特に隠していないので接点がある人が知ってる分には違和感はなかったのだが、知らない人に知られているということが気持ち悪かったのだ。
今で言う覗きやストーカーに通じる気持ち悪さを、日本人が最初に認識し出したのはこの辺からだろう、家族で住んでいる人よりも一人暮らしの方がより強く感じただろう。
ダイレクトメールという文化は、鶏が先か卵が先かと意見は分かれるだろうが、名簿業者という事業を顕在化させた。
元は探偵や興信所だ。
ウィキペディアによると、その情報源として使われていたのが、
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- 同窓生による学校の同窓会名簿/卒業アルバムの持ち込み
- 職員や会員、その構成員による公務員名簿/教職員名簿/社員名簿/退職者名簿/医師会名簿/有資格者名簿/学会名簿/ゴルフ会員権名簿/商工会名簿/協会名簿/同友会名簿/県人会名簿などの持ち込み
- 他の個人情報取扱事業者からの取得
個人情報が保護の対象として正式に明文化されたのは2003年。
最近は、小学校でもきちんと教えているようで、「それは個人情報だから聞くのも教えるのもダメなんだよ」と言う小学生(わたしの姪)もいる。
ところで、郵便としてのダイレクトメールは条件が合致してるであろう時にはたくさん届くが、引っ越ししたり、その他条件が外れたと思しき場合は途端に届かなくなる。
郵便のダイレクトメールは、中身はともかく何が届いているかは家族の目や配達人の目には触れているので、100%秘密を守るというのはハードルが高い。
21世紀に入ると、情報は郵便でよりもSNSで届く方が主流になり、最大の特徴が瞬時に双方向で文書や資料のやり取りが可能になったという点にある。
こうなると、100%の秘密が可能になる。
SNSでやり取りされるDMは、従来のダイレクトメール的なものから他人には知られたくないことまでがやり取りの対象になっている。
〜余談〜
ダイレクトメールは略するとDMとなるが、SNSのDMはダイレクトメッセージの略。
しかし、実質的には区別されてないと感じられる。
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このことには功と罪があり、良いことも悪いことも100%の秘匿が可能だが、その暴露も簡単でしかも一斉に拡散できるという特徴がある。
またマスコミの取材もDM経由で行われているものも多そうだ。
@kuntom81 西日本豪雨の取材をしております。読売新聞岡山支局です。現在災害時におけるSNSの功罪を検証する記事を検討しております。そこで、コンビニに物資が集中した当時の状況などを教えて頂けないでしょうか。よろしければフォローして頂き、DMで連絡できたらと思います。よろしくお願いします。
— 読売新聞岡山支局 (@Yomiuri_okayama) July 15, 2018
突然のご連絡、失礼いたします。TBSテレビ「あさチャン!」という番組を担当しています。「五輪おじさんの功績」について取材しており、直接または電話、メールなどでお話をお伺いすることは可能でしょうか?お忙しい中恐縮ですが、相互フォローの上、DMさせていただけないでしょうか。
— TBSテレビ「あさチャン!」staff (@asachan_staff) March 18, 2019
本当はもっと載せたいDMに関するツイートがあるのだが、個人情報をテーマにしてるエントリーなので引用するのは当たり障りのないものにとどめたが、現在のDMではさまざまな勧誘が行われている。
DMには秘密がたくさん隠れている。
秘密を共有すると、人間関係が深くなる。
秘密を共有する人間関係は、共犯関係になり、お互いを束縛するようになる。
DMには、束縛が潜んでいることをお忘れなく!
DMは、ダイレクトメールと違って、最初の一歩は自らのアプローチで始まる、まるでハリがついてるとも知らずにエサに飛びつく魚のように。