ドラッグストア大手で業界5位のマツモトキヨシHDと業界7位のココカラファインが経営を統合すると発表された。
前置きとして、少しばかり業界の事情を織り交ぜつつ今回の統合劇を整理してみたい。
おもしろいことに、この経営統合は業界7位のココカラファインが主導権を握ってるようで、業界5位で上位に位置するマツモトキヨシは次のように反応したらしい。
「うれしい。前向きに協議していきたい」。ココカラから経営統合を話し合う相手に選ばれたことを、マツキヨの幹部は喜んだ。
業界首位へ ココカラ争奪戦、勝者マツキヨに喜びと不安 朝日新聞デジタル
ココカラファインは、2008年に大阪のセガミと東京のセイジョーが経営統合してスタートし、その後も吸収合併を繰り返すことで企業規模を大きくし、業界での地位を高めてきた。
今回の統合劇のマツモトキヨシにとってのライバルは業界6位のスギHDだった。
ドラッグストアの儲かりの秘密は「ついで買い」にあると言われてる。
そのために必要なことが広範囲の品揃えと、時にはディスカウントストアをライバルにすることもあるので安い価格で提供することが重要になる。
「ついで買い」を充実させるに当たってドラッグストアの弱点は薬剤師を配さなければいけない調剤部門になる。
処方箋で薬を求める多くの人にとって薬はどこで買っても同じものなのでまさに「ついで買い」の典型だろう。
現在業界2位のウェルシアは、調剤部門の充実でその地位を上げたと言われてる。
業界順位が下位にも関わらずココカラファインが今回の統合劇で主導権を取れたのは調剤部門が充実してるからだと思われる。
ドラッグストアにとって調剤部門の良さは、国の定めた薬価に基づくので薄利ではないこと。
前置きはここまで。
今回のココカラファインとマツモトキヨシの統合で改めて感じたことが、企業合併やM&Aと企業規模の拡大が持て囃される理由として、あまり表向きには言われてないが、日本の企業が生き残りをかけると拠り所にせざるを得ないのがリストラとコスト削減しかないんだろうなということ。
企業合併やM&Aは、するだけでメリットが出るのは市場の支配力や影響力の増大と、原材料や商品の大量仕入れによるコスト削減効果など。
一方デメリットとしては、実行された時点では組織としてはただの太った豚に過ぎないと言う点。
調剤部門を除けば、ドラッグストア業界は薄利多売を狙うしかないと思える。
販売価格を変えずに、または若干安くしても、従来以上に利益を上げることを目指せば、仕入れコストを下げることと会社運営上の固定経費を削減するしかない。
固定経費に占める割合が高いのが人件費。
ココカラファインもマツモトキヨシもHD(ホールディングス)企業。
HD(ホールディングス)は、経営と現場を切り離すので、どんなに業績が上がろうと現場へは還元されない。
ココカラファインやマツモトキヨシの正社員の中には心穏やかでない人がいるはずだ。
今回のココカラファインとマツモトキヨシの統合のニュースで、日本のデフレは一層進むような気がしてきた。