世の中を貫くシンプルな原理原則は何なのだろうか、そもそも果たしてそのようなものがあるのだろうか?
その答えを探ることが究極の目的だと思われるのが社会学や心理学で、これらの背後にはいつも脳科学が見えてくる。
人の数だけ生き方や考え方や感じ方があり、それらは一つとして同じではないと考えたら社会学も心理学も脳科学も成立しないだろう。
現代のキーワードとして共感が上げられるところを見ると、一人一人違うと思えることにも共通するものがあると捉えるほうが自然な流れに感じられる。
最近の世の風潮として、人々の関心を得ようとする場合(ビジネスにおける集客のように)の共感を刺激する要素として、
- 不満
- 不安
- 心配
- 不幸
- 病気やケガ
などが入り口となり、
これらの要素を解消したり解決に導くように見えるものや錯覚させたり騙すものばかりだ。
好きだから、気に入ってるからという積極的な気持ちで選択してることすら、よく見ると上記のネガティブな要素の解消や解決のためのものがほとんどだ。
冒頭で書いた『世の中を貫くシンプルな原理原則』にはわたしも大いに興味があるのだが、その答えに近いかもしれないという話があった。
次に紹介されてる本は2010年に出版されたブレイク・スナイダーの本だが、間もなく2020年になる今世間の注目を集め出したことがおもしろい。
乱暴にまとめるなら、人は葛藤を見たいので映画を観る。主人公が葛藤を克服し、欲求を満たすとき、観客は、一番基本的なレベルで共感できる。これが映画の快楽になる。主人公の葛藤をドライブするのがストーリーといえるだろう。
以前わたしはブログで、映画のパニックや災害やアクションを扱ったものの多くは1965年に始まった人形劇のサンダーバードの二番煎じだと書いたことがある。
タイトルに『予定調和はおもしろくない』と付けてるところを見ると、当時のわたしは真似をしたことを予定調和と受け取っていたんだなと分かる。
言われたら気付いたが、当時のわたしは葛藤が大きなテーマになっていたとは受け止めきれなかった。
昔のドラマや映画では勧善懲悪や他人の不幸は蜜の味がキーワードにされることが多く、役者やタレントも正義の役と悪い役にはっきり分かれていたが、いつの頃からか悪役をやっていた方が良い役を演じるようになり始めた。
そうすると味わい深さが深まるのが感じられたが、このような現象もわたしは予定調和を打ち壊すと捉えていたが、そう捉えるよりも葛藤のリアリティを高めるためだったと捉えた方が的を射てそうだ。
そう考えると一つだけ合点がいったのは、葛藤の解決を安易に綴っただけで再現性を感じられない自己啓発書の中でもホリエモンに一定の人気があり続けることだ。
ホリエモンの人生は得意の絶頂から失意のドン底に突き落とされ一度は全てを失ったのだ、そして、そこから這い上がった人生に見えるからなのだろう。
読者は、自分より遥かに辛い気持ちになったであろう状態で凄まじい葛藤を感じたであろうと感情移入してるから惹きつけられるのかもしれない。
つまり、本の内容とは別のところで惹かれていると思えば、売れる理由に納得がいくのだ。
好きや楽しいを追求する人には、参考になりそうで参考にならないかもしれない。
しかし、売れたい、評価されたいと望むなら知らないと損をするかもしれない。
わたしは、売れたり評価される背景に共感があるとするならば、共感の正体を見てみたいとは思っている。
架空の話である映画やドラマが評価されるためには良い脚本が必要不可欠なのだが、リアルな人生にも良い脚本が必要なのかもしれない。
順風満帆な人生ドラマなんて誰もおもしろいとは思わないだろう退屈なだけだ。
葛藤が多い人生とは楽しい人生なのかもしれない。