日本では歯に関して使われるものだとして知られているのがフッ素。
このフッ素と水素を化合させてできるのがフッ化水素。
今日は、この生活の身近にあるようでよく分からないフッ化水素(通称フッ酸)をめぐるゴシップ話。
Google Trendsで検索可能な2004年以降の動きを見ると、
大きな山が二つあるのが分かる。
最初は2013年3月で、新しい山は2019年7月。
フッ化水素の何が検索されていたかというと、2013年に関してはこれ。
女性の足指、5本切断「フッ化水素酸」 肌、骨溶かし、死亡にまで至る猛毒 2013/3/29
思いを寄せていた女性の靴に猛毒の薬品・フッ化水素酸(フッ酸)を塗り、足の指5本を切断させたというニュースが世間を震撼させている。
犯行に用いられたフッ酸は、工業用に広く用いられている薬品だが、硫酸よりも強い腐食性をもつ。専門家よると、骨が溶けたり、死亡したりすることもあるという。
そして2019年7月はこれ。
7月4日より、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の大韓民国向け輸出及びこれらに関連する製造技術の移転(製造設備の輸出に伴うものも含む)について、包括輸出許可制度の対象から外し、個別に輸出許可申請を求め、輸出審査を行うこととします。
フッ化水素がどのような用途に用いられてるかは検索すれば詳しく出るので特に触れないが、製造技術には高度なノウハウが必要で特に純度が99.9999999999%のものは日本でしか作られていないという特徴があり、数少ない日本が世界に誇れる技術なのだ。
しかし、フッ化水素をめぐる問題のおもしろいところはフッ化水素の問題のようでいて実は日韓両国の感情の問題に見えるところがおもしろいので、まるでゴシップ話に感じられる、そして途中からはアメリカ企業も参入し始めてるのだ。
先ず、フッ化水素の取引に条件を付けてきた日本の動きに対して韓国は、
韓国企業、輸出規制受けフッ化水素を増産 日本製品の代替目指す Newsweek 2019年7月23日
と反応した。
フッ化水素の自国生産を目指した韓国は、高純度ではないフッ化水素は実用化できたらしいので一部の用途に関しては代替されていったが、高純度のものはハードルが高く日本に頼らざるを得ない状態なので8月は一旦取引量がゼロになったが、その後は取引量は下がっても続けられている。
韓国向けフッ化水素輸出、1年で3283t→100kg 9月 貿易統計 前月比では若干回復 2019/10/30 日本経済新聞
その後は9月に比べると増えているが10月は約900kg、11月は約950kgに留まっている。
12月分の発表はまだされていない。
しかし、おもしろいのは取引量が変化したことよりも、取引価格の基準単価が激変したことだ。
韓国向けフッ化水素の価格、輸出管理強化後に264倍も値上げされていた! 韓国が超高値でフッ化水素を買わされていたことが発覚!
さらに、超高純度でなければ自国生産できると考えていた韓国製フッ化水素を使った製品が大量の不良品を出しているらしく、このような話が出ている。
サムスン・LGの業績失速、「韓国時代」の終わりの始まりか 1/13(月)
有機ELも問題を抱える。韓国の報道によると、LGディスプレイーが米アップルに供給した「iPhone(アイフォーン)11 Pro」シリーズ向け有機ELパネルで、日本製から切り替えて国産化したフッ化水素に起因して大量の不良が発生したと見られる。
一見韓国の完敗に見えるのだが、ここに来てまた新しい動きが出ている。
米デュポン、韓国で半導体材料生産 日韓対立間隙突く 日本経済新聞 2020/1/9
韓国政府は半導体材料の国産化を掲げ外資企業の工場誘致を促しており、デュポンのような動きが増えれば日本企業の競争力に影響する可能性もある。
このデュポンの動きが明るみに出るやいなや、
森田化学、フッ化水素の韓国輸出を再開 日本経済新聞 2020/1/9
森田化学は韓国で約3分の1のシェアを持ち、サムスン電子やSKハイニックスなどの半導体メーカーに供給していた。
この件は韓国国内ではデュポンの動きにビビって日本が引いたと伝えられてるようだ。
そもそも日本がフッ化水素の規制に動いた理由は、化学兵器に利用される可能性が高いことがあり韓国経由で北朝鮮や第三国に渡ることを警戒してのことだったのだが、この動きに対して韓国は徴用工問題の報復と解釈したことから始まっている。
断片的なニュースとして見てると全く興味が湧かないのだが、政治や経済の中枢では感情的な人間ドラマで事態が展開してることが分かると、芸能界のゴシップと同じレベルで楽しめることが分かった。
今後のフッ化水素の取引をめぐるニュースが楽しみだ。