9月23日にカリフォルニア州知事が『2035年までに州内でのガソリン駆動の自動車とトラックの新車販売を禁止する』という行政命令に署名したと話題になっていた。
これまでも排ガス規制などカリフォルニア州が動いた後で世界が一斉に動くことが多かった。
ハイブリッド車プリウスが、コンセプトカーとして出品されたのが1995年で、最初の市販車が世に出たのが1997年。
この頃から車の世界のコンセプトは二分化が進んでいた。
排ガス浄化(Co2削減)&超低燃費を目指す動きと、ごく一部のセレブ相手に高級車が超ハイパワー化を図り始めた。
そんな世の動きの中で、プリウスはハリウッドセレブに支持されていたのは、環境に対する意識の高さをアピールするための小道具として最適だったからだ。
カリフォルニア発で何かが動き出す際には、ハリウッドスターも動くので話題性が伴うのは今も昔もだろうか。
2035年までにガソリン車の新車販売を禁止するという決定は、どんな流れを起こすのだろうか?
表向き環境問題として語られる課題が解決に向けて動き出すときは、モラルの問題というよりも、コスト的な有利を築けたことで普及が進むものだ。
排ガスという環境問題に対して、燃費の良い車を実現すれば結果的に撒き散らす排ガスは減ることになるし、同じ距離を走って消費するガソリンの量が減れば、負担するガソリン代も少なくて済むことになる。
プリウスを例に挙げると、当初販売価格は高額で意識高いセレブじゃないと手が出なかったが、セレブにとっては意識の高さをアピールするための投資としてはむしろ割安なくらいだった。
普及とともに価格は下がり、セレブでなくても買える人が増えるようになった。
普及の背景には、コスト意識を正当化できる理由が必要なのだ。
コンセプトの誕生から4半世紀を過ぎたプリウスはさすがに人気に翳りが見えていて、プリウスが担っていた役目はテスラが受け持っている。
コスト意識を追求することは、限界費用を追求することでもある。
限界費用というワードを世間に知らしめたのは、5年前に出たこの本だったような気がする。
次に紹介する記事は、冒頭で紹介したガソリン車販売禁止の流れを受けてるように感じられるが、実際には限界費用意識を追及した結果と考えた方が相応しそうだ。
ついに石油時代の終焉か?英BPが「エネルギー業界の大変革」を予測、その理由とは?
ITビジネスは従来型ビジネスと比較して断絶的なイノベーションだと言われる。その理由は、ITビジネスは限界コストが限りなくゼロに近くなるという特徴を持っており、従来のビジネス基盤を破壊してしまうからである。
従来型ビジネスは生産量を2倍にするためには、単純計算でコストを2倍にする必要がある。トヨタが自動車の生産量を2倍にするためには、2倍の生産ラインを構築する必要があるのは自明の理である。だがITビジネスは必ずしもそうとは限らない。グーグルは利用者を2倍に増やすために、2倍のコストをかける必要はない。
詳しくは本文を読んで頂くとして、世の中は限界費用ゼロに向かっているように感じられる。
投資における利回りや、売上や利益の大きさだけにこだわるような、従来型の価値観とは違う価値観が社会の中枢部にも及び始めているように感じられる。
コストが掛かることが何よりも嫌がられるようになっているのだ、当初の皺寄せは最も簡単に解決できる人件費がターゲットになるだろう。
コロナの問題ですでに顕在化してるじゃないかと思う人も多いだろうが、おそらくまだ始まっていなくて、これから雇われ業界には大嵐が吹き荒れてもおかしくないと思える。
始まりは悪夢のようだが、この流れに適応して別の未来を拓くことを考える方が賢明に思える。
全てのものがフリー(無料)に向かうと言われ始めたのが2009年。
直近10年の動きを振り返ると、少しずつ、でも確実に、世の中は動いていることが分かるとともに、コロナのせいで余儀なくされてると思えることの多くは、コロナがなくても時間の問題だったのではと思えてくる。