違う見方

新しい時代の始まり。複数の視点を持つことで、情報過多でややこしい現代をシンプルに捉えるための備忘録的ブログ。考え方は常に変化します。

『注目されたいという欲求は創造性を削ぐ』 by ジョセフ・ゴードン=レヴィット 

おもしろいツイートが流れてきた。

 

 

 

このツイートへのリプの中に次のツイートがあった。

 

 

 

 

最初のツイートでは、相談に対して医師の海原純子さんが回答してるが、その内容とTEDのスピーチの内容はほぼ同じ。

 

良いこと言ってます。

 

TEDには日本語の字幕も入っているのですが、以下は自分のための備忘録としてTEDの文字起こしをします。

 

 

〜〜ここから文字起こし〜〜

 

まず、ご注目くださりありがとうございます。

 

こんな風に満席の会場にいるのはなかなかの気分です、

 

全員に注目されてるなんて。

 

注目を集めるというのは強力な感覚です。

 

私は役者なので専門は…、そうですね…特にありません。

 

でも、注目されることについてはよく知っています。

 

幸運なことに私は、

 

本来値する以上に多くの注目を集めてきました。

 

それには感謝しています、

 

さっき言った通りすごい気分ですから。

 

でも、もう一つこんな感覚があります。

 

幸い役者として何度も経験しました。

 

不思議なことに、ほとんど反対の感覚なんです。

 

なぜなら、それは注目を集めることではなく、

 

注意を向けることから感じるものだからです。

 

演じているときは、深く集中してるので、

 

たったひとつのことにしか注意を向けません。

 

セットに入って、

 

撮影が始まろうとしていると、

 

第一ADの『回りました』の後で、

 

『スピード』『マーカー』『用意』、

 

そして監督が『アクション!』と声をかけます。

 

その流れを何度も耳にしてきたので、

 

パブロフの犬の反射のような魔法の呪文になっています。

 

『回りました』『スピード』『用意』『アクション』、

 

自分でも無意識のうちに何かが起こります。

 

自分の注意が…狭まるんです、

 

世の中の他のことは全部、

 

気になっていることや、

 

いつもなら気を取られてしまうことが、

 

全て消え去って、

 

ただ自分がそこに存る。

 

その感覚こそが私が愛してやまないもので、

 

それこそが創造性だと思います。

 

役者をやっていて良かったと思うのはそんな瞬間です。

 

ですから、強力な感覚は二つあります。

 

 

注目を集めること、

 

そして、

 

注意を向けること。

 

 

もちろん過去10年間で、

 

新しいテクノロジーのおかげでより多くの人が、

 

注目を集めることができるようになりました。

 

演技に限らず、クリエイティブな表現を使って、

 

文章や写真やドローイングや音楽などいろいろです。

 

流通のためのチャンネルが民主化され、

 

それ自体はいいことです。

 

 

でも、創造的でありたいと願うすべての人にとって、

 

予期せぬ影響があったのではないかと、

 

思わずにはいられません。

 

私自身もそうです、無関係ではありません。

 

私たちの創造性が、

 

だんだんとある目的のための手段になっていると思います。

 

その目的とは、注目を集めることです。

 

だから、

 

声を上げずにはいられません。

 

私の経験から言うと、

 

注意を向けることで得られる感覚を追い求めれば、

 

そうするほど、

 

幸せを感じるからです。

 

 

注目を集めることで得られる感覚を追い求めれば、

 

そうするほど、

 

むなしい気持ちになります。

 

(拍手)

 

この話はずっと昔にさかのぼります、

 

覚えている限り、役者であることを注目を集めるために、

 

初めて利用したのは、8歳の時のサマーキャンプでした。

 

オーディションを受けるようになって1年が経った頃で、

 

ラッキーなことにテレビ番組やコマーシャルで、

 

小さな役をもらっていました。

 

サマーキャンプでは、それをやたらに自慢しました。

 

最初は上手くいきました。

 

他の子供たちにもっと注目されたんです。

 

『ファミリータイズ(番組名)』に出ていたからです。

 

でも、雲行きが変わります。

 

自慢しすぎたんでしょうね。

 

他の子供たちにからかわれ始めました。

 

ちょっと気になっていたロッキーという女の子を覚えています。

 

名前はレイチェルで、愛称がロッキーでした。

 

かわいくて、歌が上手くて、彼女に夢中な私は自慢ばかりしてました。

 

彼女は私の方を向いて、

 

『目立ちたがり屋』と言ったのです。

 

100%その通りです。

 

でもすごく傷つきました。

 

 

その夏以来、役者であることで注目を集めることに、

 

ためらいを感じるようになりました。

 

こう聞かれたこともありました。

 

『待って、注目されたくないならなんで役者をやってるの?』

 

その頃の私は、

 

『役者は注目されるためなんじゃなくって、芸術なんだってば!』

 

すると、

 

『わかったよ』。

 

 

そこにTwitterが登場しました。

 

 

他の人と同じように、私もすっかりハマりました。

 

すっかり偽善者になったのです。

 

だってその頃は、

 

役者であることを利用して注目を集めていたんですから。

 

どう考えたってこんなにたくさんフォロワーがいるのは、

 

気の利いたツイートのおかげなんかじゃない、

 

そう思ったこともありましたが、

 

フォローされるのは『バットマン』に出てたからじゃない、

 

発言が気に入られるからだ、

 

僕がいいこと言うからさ。

 

(笑)

 

 

それからまもなく、

 

私がこよなく愛する創作過程にも影響するようになりました。

 

今もそうです。

 

そうならないようにしますが。

 

座って台本を読んでるとします。

 

本来はこう考えるべきです。

 

『どうしたらこの役と共通点を見出せるか?』

 

『観客はこの物語をどう捉えるだろうか?』

 

 

そうではなく、

 

『この映画のことをTwitterで何とつぶやこう?』

 

『なんて返信しよう?』

 

『たくさんリツイートされるように気が利いていて

 

適度に無愛想で、辛辣しぎないのがいいな、

 

みんな傷つきたくないし、仕事をキャンセルされたくないからね』

 

 

こんな考えがよぎります。

 

台本を読んで、アーティストであろうとすべきなのに。

 

だからといって、

 

テクノロジーが創造性の敵だとは言いません、そう思いません。

 

テクノロジーはツールです。

 

かつてないほどに人間の創造性を高めうる可能性があります。

 

でも、

 

創造性が注目を集めるための手段になってしまう危険性を

 

語るのであれば、

 

現代の巨大ソーシャルメディア企業の

 

注目を集めたい衝動に基づいたビジネスモデルについて

 

語らねばなりません。

 

よく見知ったことだと言う人もいるでしょうが、

 

非常に実際的な意味のある問題です。

 

例えば、Instagramのようなソーシャルメディアは、

 

どうやって利益を得ているのか?

 

写真共有サービスを販売してはいません。

 

それは無料です。

 

では、何を売っているのか?

 

『注目』を売っているのです。

 

ユーザーの注目を広告主に売っているのです。

 

私たちがInstagramのようなものに、

 

大量の時間を割いてることについては、

 

多くの議論がなされていますが、

 

私の疑問はこうです。

 

どうやってInstagramはこんなに注目を集めているのか?

 

 

私たちが与えてるんです。

 

 

誰かがInstagramに何かを投稿すると、

 

フォロワーから一定の注目を集めます。

 

フォロワーが数人でも数百万人でも一緒です。

 

皆さんがより多くの注目を集めれば、

 

Instagramはより多くの注目を売ることができます。

 

皆さんができるだけあくさん注目を引くことが、

 

Instagramの利益になると言うわけです。

 

だから注目を欲しがり、渇望するように仕向けられ、

 

注目されないとイライラするようになるのです。

 

Instagramはユーザーを、

 

注目を集めるという強力な感覚に溺れさせます。

 

よく冗談で言いますよね、『すっかりスマホ中毒だ』って。

 

でもこれは本当に中毒なんです。

 

 

でも、これだけは言えます。

 

注目を集めることへの中毒は、

 

他のものの中毒になるのと全く同じことです。

 

 

決して満たされません。

 

科学的な裏付けもあります。

 

 

 

最初はこう思うかもしれません。

 

『フォロワーが1000人いたら気分がいいだろうな』

 

でもそのうちに、

 

『いや、フォロワーが1万人になったら』

 

『10万人になったら』

 

『フォロワーが100万人になったら気分がいいだろうな』

 

 

私はTwitterで420万人にフォローされてますが、

 

だからって気分が良くはありません。

 

Instagramのフォロワー数は教えません。

 

フォロワーの少なさを心から恥ずかしく思うからです。

 

『バットマン』の公開後に始めたものですから。

 

(笑)

 

 

他の役者を検索して、

 

自分よりフォロワーが多いのを見ると、

 

自分はダメだと思います。

 

なぜなら、フォロワー数というのは、

 

全員に自分はダメだと思わせるものだからです。

 

 

自分を不十分だと思う気持ちが投稿を促し、

 

注目を集めようと思わせます。

 

皆さんが集めた注目を会社が販売して稼いでいるのです。

 

ですから、

 

どれだけ注目を集めても、

 

『ついにやったぞ』『ああ、これでよし』とはならないのです。

 

 

私よりフォロワーの多い役者はたくさんいますが、

 

皆さんきっと同じことを言うでしょう。

 

 

あなたの創造性が、

 

注目を集めたいという願望に突き動かされるなら、

 

その創造性が満たされることはありません。

 

 

 

でも、良い知らせがあります。

 

 

強力な感情はもう一つあるのです。

 

 

あなたの注目の使い道は、

 

巨大テック企業に支配され販売される以外にもあるんです。

 

 

先ほどお話ししていた、演じることが大好きな理由です。

 

 

ただ一つのことに注意を向けられる、と言うことです。

 

これにも科学的な裏付けがあることがわかりました。

 

 

心理学者や神経科学者は、『フロー』という現象を研究してます。

 

これは、人の脳内で起こる現象で、

 

人がただ一つ、例えばクリエイティブなことに注意を向けていて、

 

他のことで気が散らない時に、脳で起こる現象です。

 

 

より頻繁にこれ(フロー)を経験すると、

 

より幸せを感じるという人もいます。

 

 

 

私は心理学者でも神経科学者でもありませんが、

 

心から真実だと思います。

 

 

いつも簡単にできるわけではないし、大変です。

 

 

しっかり注意を向けることには練習が必要ですし、

 

やり方もそれぞれでしょう。

 

集中してしっかり注意を向けるために、

 

お伝えできることがあるとすれば、

 

こんなことです。

 

 

他のクリエイティブな人たちを、競争相手だと思わないことです。

 

 

協力できる人を探します。

 

 

例えば、あるシーンの撮影で、

 

他の役者を競争相手だと考えたらこう思うでしょう、

 

『彼らの方が自分より注目されたら、

 

自分より彼らの方が話題になってしまう』と。

 

 

集中が途切れます。

 

そのシーンの出来はきっと散々でしょう。

 

 

他の役者を協力できる相手だと考えるなら、

 

集中することが容易になります、

 

彼らに注意を向けるだけだからです。

 

自分のやることを考える必要はなく、

 

私は彼らに反応し、

 

彼らは私に反応することで、

 

共にその場に在ることができます。

 

こんな風に協力できるのが、

 

セットで演じる役者だけだとは、

 

考えて欲しくありません。

 

 

 

どんなクリエイティブな場でもありうるでしょう。

 

 

仕事かもしれませんし、趣味かもしれません。

 

 

同じ場所に居合わせない人と協力することだってできるでしょう。

 

 

気に入ってる作品の中には、

 

顔を合わせたことがない人と作ったものもあります。

 

 

ところで、

 

これこそがインターネットの醍醐味です。

 

注目を集める競争をやめれば、インターネットは、

 

協力できる相手を探すのに素晴らしい場所になります。

 

 

他の人と協力し始めれば、

 

それがセットであれ、

 

ネットであれ、

 

どこであれ、

 

ずっと容易にフローを見出すことができます。

 

なぜなら、一緒に作ってるもの、ただそれだけに、

 

皆が注意を向けているからです。

 

 

自分より大きな何かの一部になったような気持ちになります。

 

気を逸らされるものから、

 

お互いを守りあってるような気持ちで、

 

ただそこに在ることができます。

 

 

少なくとも私はそうです。

 

 

いつも上手くはいきません。

 

 

注目を集めたいという、

 

中毒状態のサイクルに、

 

入ってしまうこともあります。

 

 

だって、今この瞬間も、

 

こう言ってる自分がいないとは言い切れません、

 

 

『ねえみんな見てよ、TEDでトークしてるんだぜ!』

 

 

以上です、ありがとうございました。

 

他の誰かに注意を向けていいですよ。

 

(拍手)

 

 

〜〜文字起こし以上〜〜

 

 

 

こうやって文字にすると、ただ聞いてるだけより心に沁みる気がするのは気のせいではないと感じる。