現存する自動車メーカーで一社だけ異質な存在があるとしたらテスラだ。
2008年に最初の生産車両を世に出した頃からEV(電気自動車)に特化していて、未来を見据えてるとはいえ、既存自動車メーカーとの棲み分けが成り立っているようにしか思えなかった。
それは逆に考えると、EVが自動車市場の主流になることはあり得ないと、どこかで思っていたからかもしれない。
テスラは、日本では市場に出回ってる車両数という意味ではまだまだ超マイナーな自動車メーカーだが、知名度やイメージはトップクラスになっていて、世界各国がEVシフトを打ち出し、日本政府や東京都まで期間を定めてEVシフトを打ち出すと、国内自動車産業の業界団体である日本自動車工業会(自工会)が2020年12月17日に会長を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長は、一連の報道に関して、参加した記者たちに苦言を呈した。
<参考>
自工会 豊田会長「すべてEV化ならピーク発電10~15%増必要」…性急な電動化論に危機感
テスラは、EV以外にも自動運転に関しても世界の最先端を歩んでいる。
自動車造りにおいてテスラに不安があるとすれば、大量生産を目論むメーカーとしての生産システムに対する懸念だけで、設計そのものに対する不安ではない。
逆にいうと、既存の自動車メーカーの優位は大量生産するノウハウを確立させられてるという一点でしかなく、先進性ではすでに負けている。
市場はそれほど先進性にこだわってるとは思えないが、政治主導で市場が変えられてしまうと、オセロの石の色が一気に変わるような状態になるかもしれない。
一気に変わると言っても、実際には10年単位の時間がかかるかもしれないが。
そんなテスラの創業者イーロン・マスクは、いろんなことを手掛けてるが、関心があるのは地球の環境であり、持続可能性だと言っている。
商品や業種や業界への関心で行動してるわけではなさそうだ。
カメラがアナログからデジタルへ変化した時には、プレイヤーの顔ぶれは大きく変化したわけではないのは、カメラはレンズなど光学性に依存するパーツが多いし、操作性まで考えるとサイズを小型化することが簡単ではなかったからだ(と個人的に思っている)。
カメラが完全にデジタルへシフトした後でスマホが登場した初期の頃までは、光学性に対抗することは簡単ではなかったが、徐々にデジタルの進歩はAI搭載でデジタル処理で光学性に対抗できるレベルになり、サイズの小型化による持ち運びの便利さや手軽さで、使用用途を問わなければスマホがデジカメを上回るようになり、カメラ市場は大幅に縮小してしまったのが現在だ。
興味深いのは、撮影に対する関心や要望はかつてないほどに高まっているのにだ。
すでに起きた変化の過渡期をリアルタイムに経験すると、ユーザーレベルではドラスティックな変化があるのではなく、極めて自然に穏やかに、『これ(スマホ)で十分じゃん』とばかりにシフトは進んでいったと思えるが、カメラ業界でビジネスに携わっていた方にとっては激震が走り続けていたことだろう。
ガラケーが登場した頃から言われてることに、『ライバルは隣接業界ではない』というのがある。
携帯電話を所持した中学性〜大学生にとって、小遣いのほとんどが電話代で消費されると、CDや雑誌や飲食などに回す余裕がなくなり売れなくなるという現象に対して言われていたことで、決して同業他社に客を奪われていたわけではなかったことを指していた。
同じようなことがスマホでも起きているのだ。
スマホのライバルはスマホかもしれないのだ。
新機能?壊れるまで? 【世論調査】スマホの買い替えのタイミングは?○年以上が過半数
Q. あなたはスマホをどの程度の頻度で買い替えますか?
1年に2回以上 1.3%
1年に1回程度 3.5%
2年に1回程度 36.9%
3年以上は買い替えない 46.7%
買い替えたことはない 5.5%
スマホは持っていない 6.1%
格差が拡大する世の中では、平均的な可処分所得は減少傾向にあると考える方が妥当だろう。
ビジネスとは、その減少傾向にある可処分所得の奪い合いで、ライバルは隣接業界や隣接分野とは限らないのだ。
いろいろなことがスマホに集約される中で、活路として見出された価値観が、体験型と呼ばれるもので、旅行だったり、スタジアムでのスポーツ観戦や様々なアクティビティの体験だったりの一期一会だったのだが、これらがコロナ禍でダメになっている。
コロナの終息で体験型の復活を待つのか、それとも別の何かを探すのか?
自分のフィールドではないと思い込んでる異業種や異分野へアンテナを張ることは決して無駄ではないはずだ。