機械化、自動化、ロボット化、AI化は、ものづくりの世界では、大量生産のためや高度な品質の安定確保のために採用され普及してきた。
同じ作業を人間が手作業で行うよりも多様な観点で確実に優れてるからだ。
テレビで工場での生産風景が放映されているのを見ると、作業速度が要求されたり、清潔さを要求されたり、作業工程に危険があるようなものほど人間の手作業から置き換わっている。
もはや手作業や手作りは趣味の世界だけかもしれない。
こんなことは当たり前だと思っていたが、最先端分野でありながら手作業に拘ってる世界はまだまだ多い。
そういう世界があまり知られていないのは、おそらく少量生産だから。
一体、生産数がどの位だと手作業に分があるのだろうか。
自動車の世界だと、
めったに見られない工場でフェラーリが完成するまでの工程を、動画と写真でお見せしよう。(アーカイヴ記事) https://t.co/0fQbBbWacz
— WIRED.jp (@wired_jp) 2021年6月5日
上記は2018年の記事。
1,300人の従業員が年間8,400台を生産している。
フェラーリのクルマは完成までに3カ月を要する。何よりも重要な工程はエンジンの鋳造だ。この工程は、敷地内にある鋳物工場で行われ、完成した部品は組み立てラインに運ばれる。毎日147基のエンジンが手作業で組み立てられているという。
これに負けてないのが、日産のGTーRのエンジン製造。
日産 GT-Rが、エンジンの手組みにこだわるワケ 2020.07.22
通常、エンジンは組み立てラインで生産されます。流れるライン上で多くの作業員が、自分の担当する工程の組付け作業を行い、一連の流れを通して、1基のエンジンが組み上げられます。
一方、GT-R用エンジンは、その作業を『匠』が1人で、しかも手組みで行います。ライン組み立てに比べると、効率は圧倒的に悪くなるやり方ですが、日産はあえて『匠』による手組みにこだわっています。
その理由は、GT-Rというクルマが年間800台の限定販売で、かつ1,000万円以上する高級スポーツカーであること、さらにこのクルマを購入するのは、お金持ちだけではなく、走りにこだわるマニアックな人達も多くいることが関係してます。
つまり日産は、GT-Rを求める人たちの高い要求や期待に応えるために、『匠』による組み立て方法を選択しているのです。
手作業の優位さには条件が付くことが見えてくる。
- 少量生産
- お客の要求水準が高過ぎる
自動車以外の分野でも、高度な水準が求められると、例えば新幹線、
E4系制作風景
— ROM垢 (@StationJU7_ROM) 2021年5月31日
某氏がリンク貼ってたから観てみたけど凄かった……
まさか職人が手作業で作っていたなんて驚き pic.twitter.com/Bz6d7Nn4fQ
E4系とは今年の秋に運用が終了するモデルだが、昨年運用が開始されたN700S系でも基礎となるアルミ合金板は職人の手打ちらしい。
機械化自動化で大量生産しようとする場合に重視される要素と、手作業で少量生産する場合に重視される要素は全く違うだろう。
似たようなことは競技人口の多いスポーツのトレーニングにも当てはまるような気がする。
要素としては、
- 基礎体力の向上
- そのスポーツ固有の動きやフォームの習得
- 道具やギアの選定
ものづくりの大量生産の理屈は、スポーツに関しての上記の要素に一定の傾向が限定されることに似ている。
その傾向は、経験や歴史に裏付けられた合理性があるので、一定レベルへの到達時間の最短化には貢献するが、そこから先に関しては手作業の少量生産の理屈じゃないと対処できなくなる。
スポーツの場合だと、自分の身体に固有の要素に目を向け対処しなければいけなくなる。
一方で、人間の成長に目を向けると、逆の動きが見える。
このブログを、ラジオの子供科学電話相談(動物、恐竜、心と体がテーマ)を聞きながら書いてるが、子供の興味や関心は大人のように似通ってなくて、一人一人が本当にバラバラで、しかもその表現方法や反応も独特で、人間は本当に一人一人が自分固有の考えを持ってるなと教えられるが、大人になるとなぜか金太郎飴になる。
手作りの少量生産だったはずのものが、気が付いたら大量生産されたもののようになってしまうようだ。
しかし本当は大人だって一人一人が違っているはずなのに、そのことを表に出そうとしなくなってるように感じられる。
子供電話相談の回答者の先生の語り口を聞いていると、相手の子供に合わせて一生懸命答えようとしていることが伝わってくる。
正解を伝えようとする思いと、伝わるように表現しなければという思いの葛藤が感じられ、一つの正解に対してオーダーメイドの答えを模索してる様子が伝わってくる。
人間同士のコミュニケーションに関しては、大量生産もあれば少量生産もあるしオーダーメイドもあるのだなと分かる。
本当は分類に馴染まないことを分類することで、何かしらの分断が生まれているのかもしれない。