今朝、パナソニック、テレビ事業を大幅縮小 中国TCLに生産委託、という記事が目に付いた。
この手のニュースはいつもだったら素通りするのだが、今日は素通りせずに掘り下げてみたくなった。
パナソニックが社名変更する前の松下電器だった頃、シャープやサンヨーが開発した市場で話題になった新商品を素早くパクりさらに少し高性能化させ、デザイン的に少し洗練させ、少し高い値段の商品をリリースし市場を奪い取るということを得意にしていて、マネシタ電器と揶揄されていたことと結び付くのではと思えたからだ。
少し掘り下げると、パナソニックの問題というよりも日本企業の問題が見えたような気がした、と言ってもいまさらそんなことが分かってもどうしようもないのだが、というような話を書いてみたい。
最初に思い浮かんだのはもう15年くらい前の話だが、パナソニックのエアコンはダイキンが造っていると聞いたことと結び付いたのだ。
教えてくれたのエアコンのプロでかつ経営者、修理に行った現場にパナソニックのエアコンがあって部品の交換が必要な場合、パナソニックから部品を取るとダイキンの価格にパナソニックの利益が乗るので高くなるから、ダイキンの同一商品の品番で調べ直してダイキンから安く調達し、お客にはパナソニックの価格で請求すると言っていた。
もちろんこの程度のことで儲かるわけではないのだが、現場のコスト意識は経営者レベルでは神経をピリピリさせる出来事なのだという話の流れから出てきた話で、上記の取り組みは社員に徹底させていた。
パナソニックを含めての日本のテレビの実情は次のツイート及び連ツイが分かりやすい。
ちなみに日本国内で売られている日本製だとみんなが思っているソニーやパナソニックの高級テレビもパネルは韓国LG製です。日本にはもうベゼルレスの大型画面スクリーンを作る技術もない。その他の普及価格帯テレビは日本のメーカー品でも日本製ですらなく中国のOEM製品ですよ。
— ono hiroshi (@hiroshimilano) 2020年10月21日
日本のメーカーのテレビは、一日の長がある色彩再現技術などで同じLG製パネルを使っても色の微調整をうまくしているとか、音響の部分でもちょっとした差別化を図るとか、それなりの存在価値はあるので今のところ生き延びてるし、実際中国の最新製品にかけてるのはそういうちょっとした微調整上の質感
— ono hiroshi (@hiroshimilano) 2020年10月21日
なんですよね。でもこの「一日の長」も永遠に続くわけはなく、近い将来中国製品も韓国製に負けない色彩表現や世界最先端のデザイン性なんかを身につけるはずなので、まあ、時間の問題ですね。中国のメーカーはヨーロッパにも拠点を作り広い視点での(デザイン含む)製品開発をしてるからタフですよ。
— ono hiroshi (@hiroshimilano) 2020年10月21日
ツイートはさらに続いているのだが、ここまでで十分以上に伝わるものがある。
ここから先はパナソニックの話というわけではなく、日本の話になるのだが、部分的には誰もがすでに知ってることと繋がってくる。
上記でわたしが聞いた、パナソニックのエアコンは実際にはダイキンが造っているというような仕組みは、OEMと呼ばれる。
OEMとは「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」の頭文字をとった言葉で、直訳すると「オリジナル製品の製造業者」で、〝委託を受けて他社のオリジナル製品を生産すること〟を意味し、日本の場合系列や下請け孫請けという流れがイメージしやすいが、OEMの場合、ライバルであり敵が協力者でありお客になるという関係になりうる。
OEMは自動車にもある、つまり売ってる会社と別の会社が造っていたり協力し合っていたりなど、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでもだ。
これがEVになると、自動車の家電化に一層拍車がかかるので、今度はむしろOEMが主流になるかもしれない。
最近よく目や耳にするコンビニや小売店のPB(Private Brand)もOEMになる。
OEMに似たものには、特許など自分が持たない権利の使用権を得て行使するライセンス契約もある。
造る技術やノウハウを持ってる人や企業は、何を造ると良いのかが分からず、また造ったものを売るのが苦手なのに対し、売ることやエンドユーザーに関してはノウハウを持っている人や企業ほど商品やサービスを造る技術やノウハウには縁が無い、それを結び付けたのがOEM。
以前だったら日本の場合、問屋という仕組みが間を取り持っていたが、それが消えつつある現代ではOEM中心なのだ。
OEMとグローバル化は相性が良く、コスパも良いので大きく浸透したが、何かのトラブルが生じると自分や自社の努力や頑張りでは対応不可能になるし、肝心な部分のノウハウは知らないままになる。
OEMと重なる部分もあるように感じられることにモジュール化がある。
モジュール化が進むのは、機械化自動化が進む現場でだ。
ひとまとめの機能を備えた単位がモジュールで、モジュールとはレゴのブロックのようなもので、後は必要なモジュールをパチンパチンとハメ合わせるだけというイメージに近い。
例えばIT機器の場合、Apple製品以外はメーカーが担っているのは商品のデザインだけで、中身はモジュール化された規格品の組み合わせに過ぎないのでどこにも独自性はない。
最近Mada in Japanの定義を、海外他社から仕入れたモジュール化された部品の組み立てを日本で行うこととしているメーカーが増えているのは、Mada in Japanに付加価値を感じているからだろうが、内情が分かると無意味で無価値にしか感じない。
このように思っていたら、昨日のトヨタの話題も目に付いた。
世界がEVに傾倒する流れにグズグズと異を唱えていたトヨタが、
【日経特報】トヨタ、EV投資30年までに4兆円 年350万台を世界販売https://t.co/qnlqXyJUXw
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) 2021年12月14日
大急ぎで速報を打ちました。
— ベストカー (@bestcarmagazine) 2021年12月14日
トヨタ、、、大人げなく超本気を見せてきた。。。https://t.co/KlqjwN2yQY
EV化が進むとモジュール化が進み、そこで出遅れると自社のアイデンティティや独自性など打ち出すことは出来なくなり、トヨタといえども他社にOEM生産を依頼しなければ自動車生産できなくなるかもしれないと気付いたかのような反応に感じられる。
勝ち組に思われていた大メーカーほどこれから一波乱も二波乱も起こるかもしれない。