経済学が数学であることはよく知られてる。
昔の日本では経済学部は文系学部だったので数学が必須ではなかったが、現代の経済学部では数学は必須で、数学が苦手だと経済を理解できないと言われている。
そんな流れが定着したのは90年代に入ってから。
経済は数学だという考え方が定着した後、それを前提として今度はさらに経済学は心理学とも深く結びつき出した。
数学と心理学が結びついた経済学は、行動経済学とも呼ばれるようになった。
GAFAがなぜこんなに強くなったのか、その背景には人間心理を巧みに掴んだからだとはよく言われるが、それこそが数学と心理学で武装した行動経済学だったのだ。
さらに言うと、GAFAが行動経済学を取り入れたということは、最先端ITテクノロジーと行動経済学が一体化したということで、今起きている出来事はその結果なのだ。
アンデシュ・ハンセン著のスマホ脳 で指摘されてるさまざまなネガティブな要素は全て行動経済学と最先端ITテクノロジーが結びついた結果起きてることなのだが、指摘されてるネガティブな要素を理解した上でも、それを上回る魅力があるからスマホから抜け出せないのだ。
そんな魔物のような行動経済学の要はナッジ(Nudge)。
ナッジとは、肘で突っついて合図を送ること。
人間は合理的でありたいと思っていても、非合理的、不合理的なことはしたくないと思っていても、それに反することを気が付いたらやってるということがある。
ご大層なプレゼンでアピールするよりも、チョンチョンと脇を突っつく方が刺激は大きい場合があるのだ。
説得や納得という十分な理解がなくても人間の動機は形成されることを経済行動学は見抜いていたのだ。
世間で売れてるものの中には『あれのどこが良いの?』というものは少なくない。
反対に、『あんなに良いものがどうして売れないんだろう?』ということも少なくない。
このような理屈を踏まえた上で、広告宣伝に限らずテレビのバラエティやワイドショーや報道ニュース番組を見てると、オチがどこにあるのか不明な話が延々繰り返されてるだけで、これで関係者やスポンサーは納得してるのかなと疑問を感じていたことの多くが、おそらく狙いは行動経済学的効果なのだろうと理解できる。
魅力がストレートに伝わりにくい商品やサービスほど行動経済学を武器に活路を見出そうとしてるように見える。
自分で気付いたから動機が形成されたと思ってることの中には、巧みに仕掛けられたナッジの刺激で気付かされたというものも少なくないのが現代なのだ。
ナッジとは外からの刺激がキッカケだが、その刺激はなぜか自分の弱点を突くのだ。
結果を得たかったら、相手が武装してるポイントを正論で強く突くよりも、狙いを変えてガードが甘い弱点をちょっと突っつくだけの方が効果があるかもしれない。