作家レイモンド・チャンドラーが主人公の私立探偵フィリップ・マーロウに言わせた名言が、
タフでなければ生きて行けない。
優しくなれなければ生きている資格がない。
レイモンド・チャンドラーは1959年に70歳で他界してるのでこのセリフは60年以上前のものになる。
1970年代の日本映画のキャッチコピーで有名だった『狼は生きろ豚は死ね』は1960年の石原慎太郎の戯曲に由来するらしい。
1989年の栄養ドリンクのCMで一世を風靡したキャッチコピーが『24時間戦えますか』。
これらのことばは主に男性に向けられたもので、日本でも世界でも男はタフで強いことが求められていたし、当時の人々はそのことに同意こそすれ違和感を感じることなどなかった。
その一方で映画『男はつらいよ』も大ヒットシリーズだったことを考えると、タフでありたいと思いながらもそうではない自分自身とのギャップも大きな隠れテーマだったのだ。
タフであることを露骨に要求されるとそれはハラスメントだが、タフでないことが歓迎されないのはいつの時代でも同じだ。
現在プロ野球界ではタフではないある選手が虚弱体質と話題になっている。
悩ましいのは虚弱体質なのに実力は超一級なのだ。
そしてこともあろうかタフさの極みが要求されるメジャーリーグを目指している。
これらのことが相まって野球が好きな人もそうでない人も含めて世間がざわついている。
『狼は生きろ豚は死ね』と書いた石原慎太郎の弟裕次郎は映画俳優としてさまざまな作品でタフガイを演じていたが、残念ながらその人生はタフガイとは言えなかった。
タフな人は間違いなく健康だろうが、健康であればタフなわけではない。
健康というだけでは虚弱体質も含むからだ。
夏真っ盛りの日本だが、日本の夏は大きく変わった。
今の日本の夏をやり過ごすためには強靭なタフさが必要になった、タフさに自信がなければ冷房に縋れというくらい夏が変化した。
タフな生き方のために必要なことはと考えて、その答えが筋トレに行き着くような人はきっとタフな生き方はできないだろう。
タフに生きるとは何か?
カネでタフさは買えないなと思うと、一人ひとりが自分なりに定義する必要があるテーマのはず。