ブラック企業やブラック労働そしてブラック上司などが嫌われ始めたのは21世紀に入ってから。
それまでは根性論や愛の鞭と解釈されたり、年功序列でいずれは報われる側に回れることが約束されていたからこそ許容されていたブラック要素が露骨に嫌われ始めたのは成り立っていた価値観が崩れたからに他ならない。
そしてブラックはさらに世の中を侵食し始めて、もはや犯罪の域に入るのが当たり前になった。
ブラックな要素はエンタメの世界では主流でもあった。
多くの人気芸人が毒舌やブラックジョークでウケていたし、バラエティ番組ではブラック企画として芸人や出演者に苦痛を与えてそれを笑いにすることは長らく主流だった。
そんな世の風潮に静かにそして確実にホワイト化が逆襲を始めていた。
ホワイト化の定義はざっくりとアンチブラックだ。
テレビから駆逐された芸人の多くはブラックな芸風やキャラクターゆえに駆逐されているし、最近ではテレビ局そのものもブラックな存在として厳しい目が向けられている。
今日敢えて話題にしたいのは、ブラックと毒舌や皮肉との境界についてだ。
これまではウケて笑いが取れていた話の展開パターンが通用しなくなったと感じてる20世紀生まれは多いはずだ。
松本人志や中居正広のようなビッグネームだけでなく、こんな芸人にも及んでいるのだ。
“クズキャラ”芸人は消滅する…「TKO」木下隆行に続く「我が家」杉山裕之の寂しい末路
この記事の中で印象的だったのは次の記述。
「我が家の杉山が酔っぱらって、山根に対して『お前面白くないな~』ってツバかけて。それでも笑顔で座ってた」
番組では、普段温厚な山根について相方の田中卓志(48)がこう話すと、
山根は杉山にキレなかった理由をこう明かしている。
「杉山には言っても無駄じゃないですか。もう多分、いなくなるなと思ってたから」
いつの時代でも、何事にも境界はあるのだが、その境界は一定ではなく絶えず波のように揺れている。
波の振幅が予想を超えたら破壊が起きる。
押し寄せる波でも破壊は起きるが、その波が引いて行く時にも破壊は起きる。
今現在の現象が波の押し寄せによって起きているとすればさらに破壊は続くし、一旦波がピークを過ぎたように見えてもすぐに引き波による破壊がトドメを刺すだろう。
トドメを刺されるかもしれないのはブラックだが、その際に毒舌や皮肉なども巻き込まれることは避けられない。
毒舌や皮肉が好きな人は今が止め時のラストだと気付いた方が賢明だ。