ほめ殺し、この意味が分からない人も多いかもしれない。
知られるようになったのは1987年でWikipediaには次のように載っている、わたしが知ったのもこのタイミングでだ。
1987年(昭和62年)に、稲川会系の右翼団体「日本皇民党」が、自民党総裁選に立候補していた竹下登に対して「日本一金儲けが上手い竹下さんを内閣総理大臣にしましょう」と街頭宣伝活動を行ったことで、一躍有名になった(皇民党事件)。このほめ殺しを定着させた人物は当時衆議院議員だった浜田幸一とされる。浜田が皇民党の本部がある香川県高松市まで訪問し、『8億円積むから、(街宣活動から)手を引いてくれ』と申し入れたが、皇民党の幹部に一顧だにされず、激昂して発した言葉が、『お前らのやってることは、ホメ殺しじゃないか』とされた。
元々は歌舞伎等の芸能界の用語で頭角著しい若手を過度に褒め称えることで慢心させ油断させ芸の精進を邪魔して失墜させるという狙いがほめ殺しにはあったとされるようだ。
つまり、褒められるに値しない人から褒められることは喜ぶに値しないという意味なのだが、21世紀に入ると小手先の広告宣伝技法が広がった結果、褒められると本当に褒められたのかあるいは裏の意味があるのかが区別されなくなってしまった、というよりも区別できない人が激増したのだ。
そういえば教育や自己啓発分野では『褒めて伸ばす』というのが流行ったが、それって叱ることがハラスメント扱いになったことと無関係ではないはず。
理由がどうであれ現代では見出しやタイトルに肯定感で溢れた賞賛ワードが踊るコンテンツが溢れている、個人的には10年くらい前から賞賛ワードで彩られたタイトルや見出しに嫌悪を感じるようになっていたが、その嫌悪は一瞬はそのタイトルや見出しに惹かれる自分自身への嫌悪でもある。
これだけ詐欺の被害が増えその手口がどのようなものであるのかが紹介されても被害が減らない背景には『何が本当かわからない』というのがあるような気がする。
何が本当かわからなければ、当然ながら何がウソかもわからない。
時間の経過で同じ言葉を使った表現でも意味する内容が変化しているということを現代人はリアルタイムで経験してる真っ最中なのだ。
信用という言葉の持つ意味が信用できると解釈する人が騙されるのが現代なのだから。
『ほめ殺し』の意味も複雑になってそうだ。