違う見方

新しい時代の始まり。複数の視点を持つことで、情報過多でややこしい現代をシンプルに捉えるための備忘録的ブログ。考え方は常に変化します。

ブラック企業の経営者は何を考え、社員に何を求めるのか? その1 

恵方巻きの自爆営業が話題になっている

 

恵方巻ノルマに今年も「助けて!」 コンビニ「自爆営業」はナゼ消えないのか

 

これも立派なブラックだろうと思ったが、ブラックという言い方をあまりされない。

 

特定の商品が対象だから小規模な印象があるからだろうか?

 

ブラックは、働く社員の目線で語られることが一番多く、次いでそんな社員と接する事が多い消費者(客)目線で語られ、経営者目線の話は意外と少ない。

 

このことを考えていたら思い出した本がある。

 

読み返してみたら、最初に読んだ当時よりもおもしろいと思えたので紹介したい。

 

 

ブラック企業経営者の本音  秋山謙一郎 扶桑社新書

 

 

 

ブラック企業経営者の本音 (SPA!BOOKS新書)

ブラック企業経営者の本音 (SPA!BOOKS新書)

 

 

  

2014年3月に出版されたこの本は、取材に3年を掛けたらしいので取り上げられてる事例は最新のものではないが、内容は全く古くない。

 

見出しが良くできていてまるで名言集のようだ。

 

第1章  有名ブラック企業にみる矛盾だらけの実態

 

  1. 「無理というのは、嘘吐きの言葉」(ワタミ)
  2. 「変革しろ。さもなくば死だ」(ファーストリテイリング)
  3. 「追い出し部屋、社内就活はモチベーションを高める仕組みなのか」(ベネッセコーポレーション)
  4. 「公務員はクビにできない、という価値観はありません」(大阪市役所)
  5. 「僕は会議の時間をもっと有意義に使いたいと考えた」(楽天)

 

 

それぞれを簡単に解説すると、

 

ワタミ

昔ながらの「モーレツ社員」を作り上げていた。社員間の人間関係は良好で協力も

あり、上司と部下の間の絆も深く、皆が働く喜びを感じている一方で、1日15時間労働は当たり前でミスをした時の叱責も容赦なかったらしい、でも満足し感謝するという不思議が成立。

 

その後うつ病を発症し、ワタミを去らざるを得なくなっても、ワタミ流の行動を取ってしまい、転職先の上司から「君は”使い勝手が良い”ね」と言われる生き方をする。

 

マニュアルに則った長時間労働は、受け入れがたい人を不幸にするのは言うまでもないが、受け入れて馴染んだ人もおかしくしてしまうということだろう。

 

 

ユニクロ

ワタミと似たようなところがあり、代表の柳井正が「他人に学び、物事を多角的に見て、モノの見方が教科書的になってはいけない」というのを聞いて真に受けて、自分の発想で行動すると疎まれるらしい。

 

社員に要求されるのは、柳井正の発した言葉を覚えることであり、その言葉の持つ意味を推し量ったところで何の評価にもつながらないらしい。

 

大事なことは、柳井正の言葉をどれだけ知っているか、暗記しているからしい。

 

ユニクロで昇進する人には、「上からの指示は絶対。下への融通は効かない」という傾向があり、上からの指示は「数字を上げろ」だけらしい。

 

 

ワタミとユニクロの経営者視点での人材活用術は、「使い勝手が良い」のようだし「マニュアル至上主義」ということだろうか。

 

ワタミは、その後代表の渡邉美樹が散々叩かれ様変わりしたように感じるが、ユニクロは増々悪化してるのではないだろうか。

 

 

ベネッセコーポレーション

社内で所属が決まらない人を「人財部付」とし、段ボール箱の片付けやテプラ貼りなどをさせながら、自分を受け入れてくれる部署を探す「社内就活」をさせていたことでブラック企業大賞にノミネートされ、「教育的指導賞」を受賞した。

 

ベネッセコーポレーション社内では、この制度は肯定的に受け取ってる人もいるらしい。

 

 

 

大阪市役所

この事例は、ご存知の橋下徹さんが市長時代に起こしたことだ。

 

民間企業で働く多くの人の共感を呼んだであろうが、市役所内では不協和音も起きただろう。

 

維新の党のその後を見ると引っ掻き回されただけのようにも見える。

 

 

 

楽天

代表の三木谷浩史がひたすら合理性を求めるらしい。

 

三木谷社長の打ち出した方針に、真面目に取り組む社員は激務に追われ疲弊するが、上にいる人は方針に真面目に取り組むわけではないらしい。

 

社内公用語が英語の楽天では会議も英語が原則だが、「ここは重要なので日本語で話します」と前置きすれば日本語を使っても良いらしい。

 

そんな社内風土が追求する合理性は、本来の営利の追求や顧客の満足への配慮を疎かにする。

 

結果、真面目な人が去り、不真面目ばかり残ったらしい。

 

今はどうなんだろうか?

 

楽天を去った人の反省の弁は、「使い勝手の良い人になったらダメですね」らしい。

 

 

 

ブラック企業の経営者は、使い勝手の良い人間を求める。

 

その背景にある考え方は、最小の人件費で最大の効果を得るだろう。

 

短期的には、最小の人件費は達成できても持続性がないことと、そもそも効果の程はどうだろうか?

 

ワタミやファーストリテイリングの全盛期は凄かったが、長続きはしなさそうだ。

 

ユニクロは、企業風土が変われば今でも充分いい会社になれそうだが、柳井正がトップにいる限り社員を幸せにする会社にはなりそうではない。

 

ユニクロの上が下に要求するのは、今も昔も「数字を上げろ」だ。

 

 

結局ここなんだよな。

 

 

この本はネタの宝庫みたいだからまた続きを書いてみたい。