ついに新幹線の貨物利用が始まったのかと感慨もひとしおのニュースが流れていた。
#東北新幹線 で26日、座席に貨物を積んで輸送する実験が始まりました。#新型コロナウイルス の影響で目立つようになった空席を活用。宮城県 #石巻市 で水揚げされたマダイやカキなどの鮮魚類が入った箱は、座席に載せられて仙台駅から東京駅まで運ばれました(若杉) pic.twitter.com/n6yczva4qr
— 読売新聞写真部 (@tshashin) 2020年8月26日
この話は、コロナで大打撃を受けている新幹線をなんとかしたいという思いからだろうが、そのスピード感はなかなかのものと言えそうだ。
新幹線を貨物利用するための最大のネックは、新幹線専用の貨物車両を新たに作るとなるとコストと時間の点で課題が大きく、既存車両を使うとなると乗客専用に作られた狭い出入り口を通せるものしか運べないという点。
コスト的には既存車両から座席を取っ払う方が現実的だろうが、そうすると、出入り口の大きさから必然的に梱包サイズは限定されるだろう。
都市と都市を結ぶ新幹線が普及したことでローカル線はますます収益的に疲弊してるし、自然災害等で線路や鉄橋がダメージを受けた場合、それを機に廃止を余儀なくされるものが増えている。
JR各社は新幹線に頼る傾向が強いのだ。
しかし、旅客が順調な時には新幹線のダイヤに物流を割り込ませるのは運用上の課題も多かっただろう。
しかし、コロナのせいでドル箱の新幹線ですら客がいなくなって回復の時期も不明になると、その穴を埋めるために新幹線貨物は一気に現実性を帯びてくる。
別の背景としては、トラックを中核とする物流界では運転手の高齢化や運転手不足や過酷な労働を強いられてることだけでなく、高速道路や幹線道路のキャパシティもあり、新幹線貨物は期待されていたのだ。
元佐賀市長で現在福岡大学で経済学部の教授をしている木下敏之さんは九州経済のためにも新幹線貨物を実現させたいとずっと主張していて、次のように語っていた。
コロナが発生したから言い始めたわけではないのだ。
ここには新幹線貨物を実現するために必要なことが書かれている。
木下敏之さんは、新幹線貨物は都市のためというよりは、地方のために必要だと説いている。
冒頭で紹介したツイートは東北新幹線(JR東日本)を使った貨物の話だったが、九州でも具体化が見え始めているらしいという記事が出ていた。
JR九州、佐川急便と「貨物混載」の実証実験 九州新幹線で鮮魚など高速輸送 毎日新聞2020年8月27日
地方が頑張る話は多いが、久しぶりにインパクトがある話だと感じられる。
もし新幹線貨物が軌道に乗るならば、コロナのダメージを逆手に取ったものとして画期的だと言えそうだ。