商売の基本は、お客を増やし、客単価を上げること。
そして、もう一つの基本が、「売り上げより利益」。
つまり、経費がかかり過ぎるとダメって事。
この基本に対する考え方が変わりつつあるようだ。
というより二極分化しそうだ。
- 不特定多数を意識した展開
- 常連客を中心に運営(会員制を含む)
以前は、常連客で成立つ店は、親分子分、先輩後輩のような上下関係に基く人間関係が中心であったり、仲間意識を持てる人同士の溜まり場となり、その輪に属さない人には敷居が高く感じたり、居心地が悪い場所だった。
逆に言うと、常連客には居心地が良いのだ。
以前は居心地の良さは人間関係に依存していたのだ。
常連客を大事にするという価値観は、小規模な展開からスタートし、あまり規模が大きくなると馴染まないだろう。
不特定多数を意識する展開は、規模も大きく、関係する人間も多くなり、長時間稼働になる。
「 居場所」「居心地」は重要なキーワードになる
日本人が残業したがるのは家庭に居場所がないからという説がある。
ここでは、会社がブラック故の残業は取り上げてないので、一連の電通問題 とは絡めない。
残業する理由として大きく2つ挙げられてる。
1.残業することが給料の増加や出世につながっているから
下記のグラフは上記サイトから引用
残業時間と出世は連動する
●ある大手メーカーの労働時間の長さと昇進確率の関係
出所:経済産業研究所。加藤隆夫(米コルゲート大学教授)、川口大司(経済産業研究所ファカルティフェロー)、大湾秀雄(経済産業研究所ファカルティフェロー)によるディスカッションペーパー(2013年)から引用
2.早く家に帰ってもロクなことがないから
時代の要請で、方針として「ノー残業デー」を設定する会社もある。
家に帰ってもロクな事がないと思ってる人は外で時間を潰す。
そういう人を当て込んだ"残業難民ビジネス"がある。
居酒屋、ファミリーレストラン、パチンコ店、サウナ、他に従来以上にアルコール類を充実させ長時間滞在しやすくした店が増えている。
少し毛色が違うものとして、多目的の自習室も増えている。
「家に帰りたくない」というのは日本特有らしい。
ここでは、居心地は二の次だ。
求められてるのは、時間が潰せる事。
「居心地の良い居場所」というのがこれからのキーワードになりそう。
いつもいる場所なのに、居心地が悪いから、居場所がないと感じる。
そういう人が多い時代になっているかもしれない。
また、自宅や職場が居心地が良いてしても、もう一ヶ所違う環境の居心地が良い場所が欲しいと感じる人も多いかもしれない。
そのもう一ヶ所の場所では、束縛やストレスからの解放が目的になるだろう。
冒頭の話は、そんなお客を意識したお店が増えてるという事だろう。
店の経営者自体が、自分の居心地の良い場所にしたいのだろう。
そうであるならば、儲けは店が維持できる程度でも合格点がつく。
居心地の良い居場所のことを、矢沢永吉は「ホーム」と言ってる
矢沢永吉の著書「アー・ユー・ハッピー?」に以下のように書いてある。
~~~~ P267 ~~~~
面白いことを最近発見した。世の中には、
ホームを持ってるやつと持ってないやつに分かれるん
じゃないかと思うね。
ホームっていうのは自分の帰るうちだ。
家庭じゃなくてもいい。
仕事かもしれない。
矢沢のホームは、ものをバーンと見せられるところだ。
コンサートの快感もそうだし、CDもそうだね。
オレはホームをちゃんと持っている。
これを持っているから、ドーンと構えていられるんだな。
アウェイばかりの人生は、人間という生き物には、難しすぎる。
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2001年に刊行された「アー・ユー・ハッピー?」。
2003年に「『アー・ユー・ハッピー?』の読者のみなさまへ」を加筆し文庫化された時に、上記のことばが追加された。
当時、矢沢永吉は35億円の詐欺に遭い裁判中で、その判決が出たことで追加されたのが「『アー・ユー・ハッピー?』の読者のみなさまへ」だ。
裁判には勝ったが被害にあったお金は戻ってこない。
しかし、ずっと生き方は変わらなかった。
そんな時に気付いたのが上記のことばらしい。
「アー・ユー・ハッピー?」には、「アー・ユー・ファイティング?」の意味が隠れてるかもしれないとも書いてある。
「居心地の良い居場所」って贅沢のためでなく、生きるために必要。