阪神糸井の筋トレが賛否両論の話題を呼んでいる。
超絶筋トレ公開の阪神・糸井 チーム内から“超人人脈紹介して!” 2018年01月17日
今年の目標を「力」という漢字一字で表現した超人は「浜風に負けないための筋力アップが自主トレのテーマ。去年も(手応えがあった打球なのに)『えっ!』みたいなことが何回かあったので」とパワーアップによる本塁打量産を宣言した。
糸井は、走攻守揃って高いパフォーマンスを発揮するバランス型の選手ではあるが、強烈なパワーを売りにするホームランバッターではない、むしろインパクトがあるのは35歳で盗塁王を取って史上最年長記録を達成した足の速さの方だ。
今年年明けとともに、糸井の筋トレの話題が一気に出たが、もともと筋肉には定評がある選手だった。
糸井嘉男の筋肉を画像と共に筋トレ野郎が解説!トレーニングの熱量は超一流 2016/10/16
糸井嘉男って身長も187cmと元々外国人にも負けない大柄な体格をしているんですけど、それに加えて胸の筋肉である大胸筋の盛り上がりが一緒になると、まさにアメリカンヒーローを地でいく筋肉の雄になるんですよ。
一般的には、筋トレ志向のプロ野球選手は走るトレーニングを嫌がる傾向があるような印象があるが、糸井の場合は走るトレーニングも定評がある、今年に限って話題になるのが不思議な気もするが、筋肉を切り口にすると読者や視聴者の反応が良くなるからかもしれない。
反対意見の代表は例によってあの人だ。
張本勲氏、プロ野球選手の筋トレに疑問「レスリングの選手じゃないんだから」
番組では阪神・糸井嘉男(36)が筋力トレーニングに汗を流す姿を放送。これに野球評論家・張本勲氏(77)は「最近の子は、野球以外のことをやりたがるね。筋肉なんか良くないんですよ。やっぱり下半身で打ちにいかないと」と苦言を呈した。
その理由を「最近はボディビルしてね。レスリングの選手じゃないんだから、野球だから。野球に関係のある練習をしてもらいたいわね。変なところに筋肉がつくとスイングを邪魔する場合が多い」との見解を示した。
MCの関口宏(74)が「筋肉ついて飛びそうじゃないですか」と返すと、「それは素人考えであって。専門家から言ったらいいことじゃない」と打撃は筋力ではなく下半身の強化が重要であると繰り返し説いていた。
最近、自然環境や地球環境だけでなく、スポーツの世界でも、ビジネスの世界でも、エコシステム(生態系)で捉えることが増えている。
部分を捉えると全体が見えなくなり、全体を見ようとすると部分が見えなくなる、人間はそうやって、各分野で発展進化したが、ここに来て全体と部分は一体で不可分だという現実に目を向けざるを得なくなってきている。
そういう意味で、スポーツにおける筋トレを巡る話は本当におもしろくなってきた。
昨年100mで9秒台を出した桐生祥秀は、室伏広治の指導を受けているが、室伏広治のイメージから想像するトレーニングとはずいぶん異なる、下記の記事は9秒台を達成する前の話だ。
桐生祥秀の9秒台への挑戦。室伏広治流のトレーニング指導の内容について。 2017/05/02/
室伏広治氏はスポーツにおける体のメカニズムを研究する「学者」としての顔を持つアスリートですのでそのトレーニング内容は独特です。
特に普段の筋トレでは鍛えにくい「細かい筋肉」を強化する事を目的として桐生祥秀選手にトレーニング指導を行っているようです。
体操の内村航平は、筋トレをしないらしいが、そもそも体操は究極の自重トレーニングとも言える。
彼が筋トレをしない最大にして唯一の理由は、体操種目において不要なな筋肉はマイナス働くためだ。(もちろん体操選手のなかにもしっかりとウェイトトレーニングする選手は多い)
もし全身の筋肉量が1kg増えたとして、そこで発生する遠心力を今までの握力(もしくは増えた筋肉量で増した握力)でコントロールし、自在に演技するのは難しいだろう。
競うのは筋力やパワーではなく、技の完成度や難易度。難易度の高い技を実現できる「体操に必要な身体」を求めた結果があの身体なのだ。
筋トレは、①筋肉を増やし②体重を増加させる。
この2つのことが、トレードオフを生む。
そのトレードオフをどう捉えるかが、筋トレに対する考え方を分けると言って良いだろう。
イチロー選手は、筋肉を肥大につけることは、もはや「選手にとって邪魔!」とすら言い放っています。
しなやかに動ける筋肉をつけることこそを最も大切にしているようです。
桐生祥秀を指導してる室伏広治は、筋肉に興味がある人にとっては究極のレジェンド的な人物で数々の逸話があり、圧倒的な基礎体力で走る跳ぶ投げる能力も抜群で独自の理論を持っている。
慣れてしまったら、それはもうトレーニングとは言わない
南原「ちょっと待ってください、ということは・・・」
室伏「反復しないようにするにはどうしたらいいか、ってことで(バーベルに付いてるハンマーを)振ったりして、毎回こう違うパターンにしてる、自分が読めないようにする、で、慣れてしまったらもうトレーニングだと僕は言わないようにしてるぐらい」
栗山「へぇ〜」
室伏「慣れたら練習じゃない、出来てるんですから、練習じゃないじゃないですか、だから慣れないほうがいいんですよ」
南原「(あっけに取られた様子で)どうですか?栗さん」
栗山「いや・・・ナンチャン、これね、スポーツ界に残る名言ですよ、『慣れたら練習じゃない』」
南原「でも普通考えたら、そのとき怪我したらどうしよう・・・とかなりませんか?なんか慣れないときに」
室伏「慣れたときに怪我するじゃないですか、慣れた頃になんでも、怪我とかね〜」
(うなる栗山)
南原「おい・・・とんでもない人来たな!『ナンだ!?』ずっとやってるけど、とんでもない人来たよ!」
(スタジオ笑)
スポーツにおける筋トレの最大の弊害は、筋肉は簡単に太く大きくなるという点にある。
これはスポーツを抜きにして、健康という意味で語る時には、最大の利点となる。
鍛えると簡単に大きくなる筋肉は、部分のパフォーマンスを大きく上げるが、全体では?となるのは、成長速度が骨や関節と大きく違うからで、成長期を過ぎてれば過ぎてるほど筋肉だけが変化し、その他は大して変化しないからだ。
そして増えた筋肉が、関節周りの動きを鈍くし、可動域を狭める可能性が高くなる。
スポーツのレベルが上がれば上がるほど、この弊害は発揮するパフォーマンスに悪い影響を与えることがある。
筋トレを悪く言う時のもう一つの理由として上げられるのが、最大筋力を増やそうとする場合、必然的に息を止める無酸素運動になることだ。
重量挙げのような無酸素領域で競技が行われるごく一部を除くと、競技の多くは呼吸をしながら連続的にプレーが続けられる。
筋肉が悪いというよりも筋トレの仕方が問われることになる。
体が大きく重くなり力を発揮する際に無酸素運動をすることになり、パワーはあるが連続性連携性のある動作に関してはパフォーマンスを落としがちになる。
エコシステムという観点で、筋トレを見た場合、トレーニングは競技をしながら負荷に変化を付け、パワーを発揮するためには呼吸法を研究するほうが良い結果に繋がるだろう。
呼吸法(こきゅうほう)とは、呼吸(息)のしかた、またその技術体系やそれを用いた訓練法などのこと。身体の機能を向上させることを目指すもの、心の働きを活発化させるもの、心の落ち着きをもたらすことを目指すもの、心身全体の調和をもたらすことを目指すもの、等々がある。
ヨーガのプラーナーヤーマに対するバンダや、仏教の禅、内丹術の武息・文息など、また気功においても、行法の基本となる重要なものである。武道・格闘技・スポーツにもしばしば独特の呼吸(法)がある(空手道のサンチンなどの型やプロレス、長時間行われる長距離走など)。声楽やボイストレーニングにおいても、良い歌唱を行うための歌唱法の体系の一部として重視されている。
スポーツ選手の報道記事を見てると、過剰な筋トレをするのは選手生命が晩年に近づいてから行う人が多い気がする、衰える自分自身を自覚し精一杯抗っているのだろうが、最も安直な方法で逃げてるとも言える。
そう言う時ほど呼吸法が、活路を見出すには最適だし、それによってキャリアを積んだベテランだけにしかできないことができそうな気がする。