違う見方

新しい時代の始まり。複数の視点を持つことで、情報過多でややこしい現代をシンプルに捉えるための備忘録的ブログ。考え方は常に変化します。

『平成』と共に去りぬ、イチロー! (追記あり)

 

イチローが引退を発表した。

 

45歳。

 

十分スゴイことなのだが、「えっ、どうして?」と多くの人を思わせたはずだ。

 

「50歳まで現役を続ける」と言っていたが、そのことばが特別なことばに思えず、むしろ当然の予定調和路線にすら感じられていたのがイチローのスゴイところだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

1994年とはどういう年だったのか?

 

94年の始まりのイチローは、取材する人には次のように見えていた。

 

ひとつ、思い出がある。まだ「鈴木一朗」という平凡な登録名だった94年春のオープン戦、1試合3安打を放ったイチローを試合後に取材した。囲んだ記者はたったの2人。早いカウントから打ったことを尋ねると「打ち損じなら悪いけれど早打ち自体は悪くないでしょ」とピシャリと返された。若いのに驚くほど自信満々で、揺るぎがなかった。

「打って、走って、守る」野球の原点披露 イチローがバットを置く日が来るとは…

 

 

 

イチロー自身にとっての94年とは、

 

子どもの頃からプロ野球選手になるのが夢で、それがかなって、最初の2年、18~19の頃は1軍に行ったり来たりで。あれ、行ったり来たりっておかしい? 行ったり行かなかったり? 行ったり来たりっていつもいるみたいだね。どう言ったらいいのだろう? 1軍に行ったり、2軍に行ったり。これが正しいか。そういう状態でやっている野球は結構楽しかった。94年、仰木監督と出会って、レギュラーで初めて使っていただいて、この年まででした、楽しかったのは。

イチロー引退会見「野球が楽しかったのは94年まで」一問一答

 

 

 

94年というのは、データ的には次のような年だった。

 

開幕直前に登録名を「イチロー」に変更。

 

初めて年間を通して試合に出場し、NPB史上初の200安打となる210安打を記録し首位打者に。

 

打者最年少(21歳)MVPに輝く。

 

 

今朝の読売新聞の記事に載っていたイチローの年度別の成績。

 

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イチローの快進撃が始まったのが94年。

 

それから26年、成績を俯瞰で見ると気付くのは、

 

  • フルシーズン出場していたのは2012年(38歳)まで

 

  • 打率が3割を下回り始めたのが2011年(37歳)から

 

という事実。

 

勝手に、選手寿命や体力低下を感じてしまうが、同時に致命的な病気も怪我もしないで選手生命を維持してきたことも感じる。

 

試合に出るということに過度な目標を置いてたわけではなく、試合に出る以上あらゆる状況で最大限パフォーマンスを発揮することが目標だったはずだと考えると、現役時代のイチローの生活習慣には見習う点が多いことが想像できる。

 

そんなイチローの習慣の中でも最も注目に値するのは「初動負荷トレーニング」と言われるもので、フィットネスコーチで、現ワールドウィング代表の小山裕史氏が1994年に提唱した理論。

 

イチローが、このトレーニングを取り入れ始めたのが1999年頃だと言われているが、すでに他のプロ野球選手で取り入れている選手がいたので、イチローが元祖ではないのだが、初動負荷といえばイチローというイメージは不動だ。

 

その理由は、初動負荷を取り入れて大成功したのがイチローだからであり、逆にいうとイチロー以外に大成功したといえる選手がいないとも言える。

 

わたしの勝手な印象論で言うならば、初動負荷トレーニングは選手寿命を伸ばすことに効果があり、選手としての潜在能力を引き出すことには有効だが、潜在能力自体を上げる効果は薄いと感じる。

 

だから、現役の選手にとっては良さを理解しづらいトレーニングかもしれない。

 

しかし、そうではない一般人にとって、健康で長生きしたいと思うならば知って損はないトレーニングだ。

 

ストイックに鍛えてる人からすると、むしろリハビリやストレッチに近いものだと言えると、実際にやった人が感じるようだ。

 

他人と比べる場合にはあまり当てはまらないだろうが、誰でも自分自身にはこんな公式が当てはまると感じている。

 

「発揮するパフォーマンス」x 「持続時間」 = 「一定」

 

物理のエネルギー保存の法則みたいなものだ。

 

初動負荷トレーニングは、持続時間を高く保つために有効だと思えるが、これこそ健康で長生きに必要な知恵だと感じる。

 

イチローの場合、現役の選手としては発揮するパフォーマンスの低下は避けられなかったのだろう。

 

しかし、その持続時間は習慣を維持する限り簡単に下がることはないはずだ。

 

そんなイチローはドラマ古畑任三郎に出演したことがある。

 

プロ野球選手でイチローという役名で犯人役で。

 

 

イチローは、ドラマ出演の理由としてこんなことを言っていた。

 

『別世界の一流のものに触れたら、自分はそこから新しい何かを感じられるのではないか?』

 

と。

 

 

全く予期してなかったイチロー引退のニュース。

 

出番が減っても、選手としての価値が薄らぐとは感じない数少ない選手の一人だった。

 

若い頃のイチローはあまり好きではなかった、発言も妙に優等生じみたものに感じていたが、それはわたしの人を見る目の無さのせいだったのだろう。

 

まるで、平成が終了するのに帳尻を合わせるかのごとくの引退発表で、「ああ、本当に平成が終わるんだな」と感じた。

 


 

<追記> 3月22日14:00

 

イチローと同期の現オリックスコーチの田口壮氏がこんなことを言っている。

 

イチロー引退「あの時点で覚悟決まっていたのか」 オリ同期の田口壮コーチ

思い返せば、1月に練習を見に行った時に、打ち方を変えた?という話になり『バットヘッドを94年の感じにしました』と。

 

イチローにとっての原点であり特別な年だったのが1994年だったのだ。