日本ではワイドショーは質が低いメディアだと思われてるが、その影響力は侮れない。
同じ事実を話題にしていても、純粋なニュース番組や報道番組だと触れないかもしれない裏話や本筋から離れたところに焦点を当てることで、視聴者の多様な興味関心を煽ることができるからだ。
全英オープンで優勝した渋野日向子さんの取り上げ方を見ていて改めてワイドショーの影響力の強さを実感した。
2〜3日前まで名前も顔も知らなかった渋野日向子さん。
そのプレースタイルから海外メディアがスマイルシンデレラと呼んだことを受けて、ワイドショーでも笑顔を中心に映像が編集されていた。
プレー中の笑顔だけでなく、コースを移動中のギャラリーとの接し方なども笑顔を中心に編集されたせいもあり、映像を見た多くの人にとって渋野日向子=笑顔となったであろう。
優勝という事実だけが伝えられていたら、優勝した瞬間が笑顔であったとしても笑顔の人とは思われないはずだ。
対称的な存在としてテニスの大坂なおみさんを思い出す。
思い通りのプレーができないと感情剥き出しで不機嫌になるその姿を見てると気持ち良い気はしないが、真剣勝負をしてるとそうなるのはしょうがないのかなと思っても、そこまで不機嫌にならなくてもと思っていた。
そのおかげで、私にとっての大坂なおみさんは情緒不安定な人として記憶されている。
ワイドショー側にとっても、上手くプレーできずに不貞腐れてる姿は格好の映像となり盛んに放送されたせいだろう。
情緒が安定してない人には笑顔は難しい。
ワイドショーは誇張して放送したがるので、良いものをより良く、美しいものはより美しく描こうとする。
それだけでなく、醜いものはより醜く、悪いものはより悪いようにも描こうとする。
そういう意味では、渋野日向子さんは全英オープンで優勝したこともおめでたいが、それ以上に笑顔の人として世界に発信されたことが幸せだと思う。
渋野日向子さんを見てると、1年前の尾畠春夫さんを思い出す。
尾畠さんにスーパーボランティアという称号を定着させたのはワイドショーの力だ。
尾畠さんの活動にとって邪魔だったことも多かっただろうが、カメラが捉えた尾畠さんの姿は清貧の美学を伝えるのに十分だった。
ワイドショーに取り上げられることで大きく株を上げることは、ケースとしては多くはない気がする。
というのは、すでに名声や評判を確定させてる人が取り上げられることが多いから。
全く知名度が高くない人が、良い点ばかりが強調されてお茶の間に伝えられることを2年連続で経験したが、こういうことはただの偶然なのか、それとも新たな夏の風物詩として今後も起きるのだろうか。
来年の夏の楽しみが増えたような気がする。