もう11年前の出来事になるのが、スーパーコンピュータをめぐる事業仕分けの際に蓮舫さんが言った『2位じゃダメなんですか?』。
日進月歩と言われる技術の世界だが、ユーザーレベルではそこまで劇的ではないが、買い替えを検討する際にはより高性能を求めることは当たり前で、わたしは次の買い替え時期が最低でも3年以上はスペックが現役として通用して欲しいと願う。
10年前には買い替え後5年は現役であって欲しいと思っていた。
現役にもさまざまあり、史上最高も引退間近もどちらも現役だ。
最新の最高スペックの最高としての賞味期限は、どのくらいなのだろうか?
お気に入りのメーカーが決まってるならば次のモデルチェンジの時までとなるだろうが、メーカー問わず最高を求めると、現実的には半年程度なのかもしれない。
スペックが違うと体験はどの程度変わるのかは、買い替えを検討する際の最大の関心事で、体験の質が変わらないなら1位や2位どころか順位なんかどうでも良くなる。
しかし、最高スペックを手に入れるためにはそれなりのコストが必要なので簡単には手が届かないことと、最高スペックを使いこなせるだけの環境というお膳立ても必要になることがハードルとなる。
そう考えると、最高スペックを手に入れても、宝の持ち腐れで終わることの方が現実には多いのだと思える、スーパーカーのように見せびらかして自慢するためだけの最高スペックというものも多そうだ。
見えそうで見えないのが、世の中には最低でも最高スペックが必要になるという状況があるということだ。
次の話がおもしろい。
「大学などの研究機関や、動画編集を業務とする企業が使うようなパーツです。一般の家電量販店ではまず取り扱っておらず、ウチのような専門店じゃないと手に入らない。ましてや藤井(聡太、18)さんのように将棋ソフトのために購入した人は見たことがない」
将棋界で快進撃を続ける藤井二冠は棋譜の分析のためのパソコンを自作することで知られているが、9月10日付の中日新聞に掲載されたインタビューで、〈最新のはCPUに「ライゼンスレッドリッパー3990X」を使っています〉と明かした。
「CPUの性能で読みの速さが変わります。家庭用パソコンのCPUが1秒間に約200万手読むのに対し、藤井二冠が使っているCPUでは30倍の6000万手読めます。短時間でより多くの局面を検討できるので、効率よく研究できます」
6月の棋聖戦第二局では、藤井二冠の妙手「3一銀」が、将棋ソフトが4億手読んだ段階では悪手なのに、6億手読むと最善手になることが話題となった。
「普通のCPUなら10分以上かかるが、藤井二冠と同じものなら10秒で導き出せます」(同前)
この1ヶ月前藤井聡太さんはこんなことを言っていたらしい。
藤井聡太2冠が「Abema―」でチームを優勝に導き、自らは3連覇 賞金で「パソコンのパーツ集めます」 8/22(土)
チームとしての優勝賞金1000万円を3人で分け合うことになるが、使い道については「パソコンを(自作で)組みたいと思っていますので、パーツを集めたいです」と語っていた。
藤井聡太さんにとってのPCは道具に当たるのだろうと思うが、そこで思い出されるのが『弘法筆を選ばず』という諺。
技量が優れてる人にとっては、発揮するパフォーマンスは道具に左右されないという意味だが、この諺は現代では通用しないように感じられる。
反対の意味の諺として『下手の道具調べ』があるが、現代は『上手の道具調べ』が全然別の存在として成り立っているように感じられる。
私事だが、庭木の剪定を脚立に乗ってする場合など、ハサミのキレが良い場合とそうでない場合の違いは安全面にも大きく影響する。
道具は値段が高ければ良いってものじゃないと思って始めた剪定作業は奥が深かった。
メンテナンスとしての研ぎ方の差で生まれる切れ味の違いだけでなく、材質としてのハサミの強度も切れ味には関係する。
切れ味が違うと、作業中の体力の消耗までもがまるで違うのだ。
ハイスペックの度合いはともかく、良い道具は、使う人の体力や集中力というリソースの無駄遣い(≒ストレス)を減らす効果も高いのだ。
このようなリソースの無駄遣いを減らす場合は、道具の違いが作業のプロセスの質や結果にも大きく影響することが分かりやすいが、一方で人気Youtuberがハイスペックなカメラを使っているのはコンテンツの質を高めるためだと言われてもピンとは来にくい。
同様に、藤井聡太さんが使ってるCPUを用いたPCを使って作業してるからというだけでは、スーパーカーを持ってるだけの人と大して違いはないように感じられる。
道具のスペックと得られる結果の関係を考えていると、もう一つの諺が浮かんできた。
失敗は成功の母。
下手の道具調べで始まったことでも、継続してると失敗は成功の母となり、やがては上手の道具調べになるのではと思えてくる。
このような結論に達したので、今後は予算が許す範囲でスペックにこだわった道具選びをしていきたい。