昨日のブログは次の二つのツイートから書き始めた。
主要自動車メーカー12社の時価総額を足してもテスラに勝てないという驚愕の事実をグラフにしてみました。
— 企業分析ハック -新しいビジネスの教科書を作る- (@company_hack) 2021年11月2日
・テスラ:138.1兆円
・12社合計:136.2兆円 pic.twitter.com/9YkVDCOqZx
テスラと上位メーカーで2021年上半期の販売台数と前年比を比較してみました。
— 企業分析ハック -新しいビジネスの教科書を作る- (@company_hack) 2021年11月4日
・トヨタ 547万台(+31.3%)
・フォルクスワーゲン 498万台(+27.9%)
・GM 350万台(+19.8%)
・テスラ 39万台(+115.6%)
時々、思い出したようにテスラが気になることがある。
これまでは、EVの要としてのバッテリーシステムが関心の中心だった。
このバッテリーシステムやITで司るマネジメントシステムでは既存メーカーを圧倒的にリードしてるが、それ以外の自動車パーツの製造や組み立てに関しては既存メーカーの方が優位だと思っていた。
今回、トータルでの車づくりにどの位の違いがあるのかを調べてみて驚いた。
イノベーションと括られていた評価の多くは、シンプルな原理原則とそれを実現するための愚直な取り組みの繰り返しだったのだ。
次のは2015年の記事。
テスラ、最先端ロボット工場に行ってみた ガソリン車メーカー工場との違いは歴然
一般的にガソリン自動車に比べ、EVは部品点数の少なく、その分製造工程も少ない。実際、エンジンが1000点以上の部品から成るとされる一方、「テスラでは(モーターを含む)パワートレインの部分は17個の部品しかない」(テスラ担当者)と、差は歴然としている。
そんなことは他車メーカーも分かっていて、テスラ車を購入し分解して解析してるはずだが、追いついてくる気配は全く感じられない。
<以下余談>
かつてオートバイの改造を楽しんでいたわたしや周りの改造のエキスパートが口を揃えて言っていたことがある。
部品点数が少なければ少ないほど信頼性が高く、故障も少ないし、故障してもすぐ直せる、と。
時代の経過とともに先端技術を活用する商品や製品で、構成する部品点数が劇的に減らせたのはICやトランジスタを発展させたブラックボックス化で、これは制御やマネジメントを司る分野だ。
しかし、車のように物理的に作用する入力に対して十分に対処でき、かつ十分な強度を実現し、さらにかつコスト的な条件をクリアするのは障害が大きいのだ。
さらに、産業構造として膨大な下請けシステムが実現してることも部品点数を減らすための障害になっているはずだ。
<余談ここまで>
そして同じことはテスラにバッテリーシステムを供給してるパナソニックにも当てはまる。
2015年の記事にはこうも書いてある。
テスラはキーデバイスであるリチウムイオン電池について、1台あたり約7000本の小型電池をパナソニックから大量購入している。車載用の大型電池でなく、小型電池を使用するのは異例だが、どのメーカーでも使いこなせるわけでなく、「(テスラは)小型電池の制御技術では一日の長がある」(電池関連のアナリスト)と専門家の評価も高い。
テスラ車のバッテリーシステムはセル数が多いのが特徴で、そのことが航続距離が短いことや、一定期間を経過すると発生する実用に絶えないほどの急激な劣化など、EVのネガティブ要素を打ち消すことに貢献してる。
しかし、パナソニックから画期的なバッテリーシステムがリリースされないと言うことは、そのノウハウを持ってないのだろうし、テスラがやってることを理解すらできてないのかもしれない。
そして、ここに来て車体(ボディ)という圧倒的に既存メーカーの方が一歩も二歩もリードしてたはずの分野でも逆転が起き始めたようなのだ。
そして「どうボディを作るべきか」を追求した結果、イーロンは多数の部品で車体を構成する事自体に問題の根源がある事に気づいた。
— MASA (@masa_0083) 2021年11月8日
だから彼は車体を前部、中央フロア、後部に分け、前部と後部については一体整形で一塊の部品にしてしまった。 pic.twitter.com/GVwMAh0Cd7
既存メーカーはノウハウの歴史があるのだが、それは部品点数が多いことを意味し、部品の数だけ下請け企業がいて、部品の数だけ付随する工程が発生する。
こんな業界の常識がイノベーションを阻んでいるのだ。
こんな話もあった。
未来のテスラ車のバッテリーは車体と一体構造で剛性、効率、安全性、コストを改善 2020年9月23日
「現代の飛行機では、燃料タンクというより翼は燃料タンクそのものが翼の形をしているだけだ」とMマスク氏はいう。「これは間違いなく取るべき道だ。燃料タンクは二重構造になっており、もはや貨物ではない。それは飛行機の構造の基本であり、技術の大躍進だった。我々は車で同じことをやる」。
イーロン・マスクがテスラで実現してきたイノベーションに見えることはどれも、優れたエンジニアだったら容易に想像できても不思議ではないことの愚直なまでの実践とそれに伴う試行錯誤を厭わなかったことだ。
だから、もちろんのこと口で言うほど簡単ではない。
そんな話が、次の動画には紹介されている。
冒頭でテスラが株式市場で異常に高く評価されてることを紹介したが、この動画では投資家との関係性のネガティブな面にも触れている。
わたしは、かつてオートバイや車に夢中な時期がありかつ改造が好きだったからこそイーロン・マスクがやってることの面白さに気付けたが、おそらくDIYが好きな人でも上の動画を見たら興味を持つだろう。
イノベーションは愚直から生まれるのだ。