マズローの欲求5段階の3番目は社会的欲求とされる。
具体的には所属や帰属の欲求で、もっとざっくばらんに表現すると味方や仲間と徒党を組みたいという欲求。
社会生活の場である学校や職場や業界あるいは趣味の世界で求めたくなる欲求だが、年功序列や終身雇用的な価値観が成立していた頃には社会的欲求はどこかに所属帰属すれば容易に満たすことができた。
そのためには所属帰属する組織や集団内に存在するルールに従うことがトレードオフだが。
さて、現代では多様化やハラスメント防止やコンプライアンス遵守など組織や集団の中に存在していたルールは無条件で良しとされるわけではなくなった。
このことは徐々に所属や帰属の心理面における効果や影響を変質させているのかもしれない。
ちょっとしたことで怒りの導火線に火がつく人が増えたことなどにも関係してるはず。
こういうことに関係してるのが帰属バイアスと呼ばれる。
たとえばある車のドライバーが運転する車が他車に割り込んだ時、割り込まれた側の車のドライバーはいらだち、その理由について、たとえば「そのドライバーは仕事などの予定に遅れそうで注意力が散漫になっていた」などの状況証拠よりも、「そのドライバーは無礼で乱暴で無能だから割り込んだ」などと言った形で、割り込んだ側のドライバーのパーソナリティー(性格)にあると解釈しがちである。
所属帰属がない人だけでなく、所属帰属している組織や集団があるにも関わらず所属や帰属の実感が乏しい人が現代社会ではとても増えているだろう。
SNSやネット上のつながりが救いになる場合もあるだろうが。
些細なことで怒り狂う人のことは帰属バイアスで説明がつくような気がするが、それ以外にも例えば詐欺話に引っ掛かるような場合や、投資や儲け話にそそられる心理にも強く影響してるのではないだろうか。
帰属バイアスによる自らの間違った判断は、ウソの情報に踊らされることと同じでもある。
ウソの情報には騙されないと自信がある人でも、チャンスにリスクは付きものだとは思っているはず。
チャンスがリスクの顔をしてる場合もあれば、リスクがチャンスの顔をしてる場合もある。
用心深いつもりでも引っ掛かる時は案外簡単に引っ掛かりそうだ。
チャンスを追いかけるとリスクが避けられない、リスクを避けようとするとチャンスが遠ざかる、クワバラクワバラ。