今やブラック労働を強いる意味になった石の上にも三年という格言。
我慢は報われるあるいは修行は実るものという意味で長年理解されていたが、今や詐欺師の騙しのトークのようになってしまった。
誰もが、やったことがすぐに結実することを求めるようになったのは、結実しない行為や行動の評価がゼロになったから。
結果より過程が大事なんて言われていたことも今や昔話だ。
ファッションの世界にファストファッションが登場したのは日本だとユニクロのフリースがヒットした25年ほど前からだろうが、その頃までの男性ファッションに関しては、ダンディズムとは痩せ我慢だなどという格言が生きていたが、こういう価値観はファストファッションに吹き飛ばされたように感じられる。
世の中には『ファスト〇〇』なものやコンセプトが蔓延している。
痩せ我慢は本当は嫌だったという本音の現れかもしれない。
ファストな価値観は合理性を持っているので、許容できれば馴染みの良さは抜群だが、それでは良い意味で抜きん出ることはできない。
昨年ブレイクしたChatGPTはさしずめファストAIと言えそうだ。
このファストの反対側にある価値観には様々あるだろうが、どれもポツンとした存在で、今のところ一大勢力にはなりそうにない。
もし価値観の多様化が本当なら、これらのポツンとした存在がもう少し勢いを持っても不思議はないのだが。
ポツンとした存在は意地や根性を含めての美学を抜きには存在できない。
合理的なファスト〇〇に対し、美学のポツン。
美学は他人に押し付けるものではなく自分が貫くだけだ。
たぶん今回のわたしの人生はポツンと歩むことだけは間違いないだろう。