違う見方

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予測力を高めても儲からない

 

超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条

超予測力:不確実な時代の先を読む10カ条

  • 作者: フィリップ・E・テトロック,ダン・ガードナー,土方奈美
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/10/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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超予測者は、空いた時間に手に入る情報だけを頼りに世界の出来事を予測してるアマチュアである。

2013年ワシントン・ポストは、超予測者は「傍受通信をはじめとする機密情報を利用できるインテリジェンス・コミュニティの分析官の平均を役30%上回るパフォーマンスを示した」と報じた。(P132)

 

 

計算できるものやことのことを線形性があると言う。線形性があるとシミュレーションが可能となり、その延長線上に予測が成立する。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/線型性

線型性をもつことで、物理学や工学においては初期値を与えてやればその後の挙動の予測が単純化できるという利点がある。

 

線形性が成立する分野に関して、人間は高度に技術を高め発展してきた。

 

今行き詰まりを感じさせている世界は、この線形性が成立する世界だ。

 

これに対し、予測が不可能な世界をカオスと言う。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/カオス理論

カオス理論(カオスりろん、chaos theoryChaosforschungThéorie du chaos)は、力学系の一部に見られる、数的誤差により予測できないとされている複雑な様子を示す現象を扱う理論である。

 

カオス理論のわかりづらさを説明する時に用いられるのがバタフライ効果。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/バタフライ効果

気象学者エドワード・ローレンツによる、がはばたく程度の非常に小さな撹乱でも遠くの場所の気象に影響を与えるか?という問い掛けと、もしそれが正しければ、観測誤差を無くすことができない限り、正確な長期予測は根本的に困難になる、という数値予報の研究から出てきた提言に由来する。

 

これからの時代は、予測が困難なあるいはできないことを予測することが求められる。

 

予測には大きく二つの種類がある。

 

人間にはどうしようもない大自然や宇宙の理屈で動いている事柄と人間の利害関係や活動に起因する事柄。

 

地震や大災害は、起きることや起きた場合の規模は予測できても、いつどこでが予測できない。

 

人間活動では、予測を求めるのは政治経済のリーダーだ。

 

一般社会では会社経営者もリーダーに含まれるので、かなり多くの人がリーダーとして存在してる。

 

リーダーには断定する強さと、一旦断定したらそれを貫く強さも求められる。

 

それができるから皆リーダーに付いて行く。

 

一方で、リーダーには先を見通す高いレベルの予測力が求められるが、予測は新しい判断材料が得られるたびに修正されなければならないということは、一回断定した判断を、条件が変わるたびに変えていかざるを得ないというリーダーの資質と矛盾する行動が要求される。

 

あまりにも複雑な現実を踏まえ、超予測者になるために必要とされる資質は「謙虚」。

 

だから、予測者として優れたリーダーは、リーダーとして優れてるとは評価されないかもしれない。

 

絶えず予測の修正が迫られる現場では、意思決定の判断は現場に委ねられねばならない、だから「司令官は部下に目標を伝えるが、その達成方法は支持しない」という戦争や軍隊に見習う戦術が適用される。

 

これを聞いて思い出したのがディズニー商法。

 

これがディズニーの哲学!アルバイトのキャストが取った行動

ディズニーリゾートで働くスタッフの9割がアルバイト

東北地方太平洋沖地震が起こったあの日、キャスト自らが判断し行動したことに、ガチで感激しました。

 

こんなこと、アルバイトが判断できるとは到底思えません。でも、彼らはそれを自らの判断でやってのけたんです。

  • パーク内のおみやげ用お菓子を食料としてゲストに配る
  • ダッフィーの大きなぬいぐるみを防災ずきん代わりに配る
  • おみやげ用のビニール袋を寒さ対策に配る
  • いつ落ちるかわからないシャンデリアの下に立って、「私は、シャンデリアの妖精です。」とゲストを安心させる。
  • おみやげ用の袋に隠れミッキーがいますとゲストを楽しませる

 

 

ディズニランドでは自然な流れで9割を占めるアルバイトですら判断できることは、ディズニランドだからできると例外扱いを受ける。

 

ディズニーが見事なのは、現場で要求される判断が高度で特殊なものにしてない点だ。

 

現場で事態に直面したキャスト(ディズニーのスタッフ)がやりやすい行動が正解になるように仕組みづくりがされてることだ。

 

このディズニー流のやり方を真似る企業が思い浮かばない。

 

わかっているだけではできないのだろうし、多くの経営者が予測力を持ち合わせてないことを示しているように見える。

 

いや予測力を持ち合わせてないのではなく予測の仕方が身についていないのだろう。

 

『超予測力』のなかで、超予測者を目指すための10の心得が挙げられている。

 

  1. トリアージ(努力が報われそうな質問を選別し格付けするという意味)
  2. 一見手に負えない問題は、手に負えるサブ問題に分解せよ
  3. 外側と内側の視点の適度なバランスを保て
  4. エビデンスに対する過小反応と過剰反応を避けよ
  5. どんな問題でも自らと対立する見解を考えよ
  6. 問題に応じて不確実性はできるだけ細かく予測しよう
  7. 自信過小と自信過剰、慎重さと決断力の適度なバランスを見つけよう
  8. 失敗した時は原因を検証する。ただし後付バイアスにはご用心
  9. 仲間の最良の部分を引き出し、自分の最良の部分を引き出してもらおう
  10. ミスをバランス良くかわして予測の自転車を乗りこなそう

 

 

2016年10月に日本語版が出版されたこの本で一つだけガッカリだったのは、イギリスのEU離脱やトランプ大統領誕生(大統領選の最中)には全く触れてない点だ。

 

予測は日常生活のなかにも政治経済の最先端でも行われている。

 

正解は結果で示されるという意味では、

 

当たるも八卦当たらぬも八卦であり、

 

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるでもある。

 

しかし、予測の的中率が高くかつその予測理由が理にかなってる人には見習う点があるのは確かだろう。

 

予測を当てるということを真実を見抜くという意味で使うならば、障害になるのは嘘や間違った情報であり、それらの元になる雑音情報だ。

 

予測とは、雑音情報の消去から見えるものは何かを当てるゲームだ。

 

しかし、雑音情報は無くても、そもそも情報自体が少なければ何も見えてこない。

 

だからといって、情報を多く求めると雑音情報が増えるというジレンマも生まれる。

 

雑音を含めて情報はすべてポジショントークだ。

 

歴史を振り返ると、人間は同じことを繰り返しているように見える。

 

含蓄のある先人の知恵である諺には、それどっちが正しいいのと思える正反対の意味の諺がある。

 

ことわざの反対語

・「善は急げ」⇔「せいては事を仕損じる」

 

・「三人寄れば文殊の知恵」⇔「船頭多くして船山に上る」

 

・「渡る世間に鬼はなし」⇔「人を見たら泥棒と思え」

 

・「二度あることは三度ある」⇔「柳の下のどじょう」又は「三度目の正直」

 

・「一石二鳥」⇔「二兎を追うものは一兎を得ず」又は「虻蜂取らず」

 

・「危ない橋を渡る」⇔「石橋をたたいて渡る」

 

・「瓜のつるになすびはならぬ」⇔「とびが鷹を生む」

 

・「おぼれる者はわらをもつかむ」⇔「鷹は飢えても穂をつかまず」

 

・「果報は寝て待て」⇔「まかぬ種は生えぬ」

 

・「好きこそものの上手なれ」⇔「下手の横好き」

 

・「立つ鳥後をにごさず」⇔「旅の恥はかき捨て」又は「後は野となれ山となれ」

 

 

 

まだ諺にはなってないが、こんな言葉もある。

 

 

・欲があるから騙されるが、欲がなければ儲からない

 

・宝くじは、買わなければ当たらない

 

 

そもそも、超予測者とはこういう人だったということを思い出す必要がある。

 

 

超予測者は、空いた時間に手に入る情報だけを頼りに世界の出来事を予測してるアマチュアである。

2013年ワシントン・ポストは、超予測者は「傍受通信をはじめとする機密情報を利用できるインテリジェンス・コミュニティの分析官の平均を約30%上回るパフォーマンスを示した」と報じた。(P132)

 

 

超予測者が手にするのは、予測を当てたという名誉だけなのだ。

 

 

神様はやっぱり平等のようだ、超予測力はアマチュア精神の持ち主に宿り、予測の的中率で儲けようとしたら的中率が下がるのだ。

 

予測力を高めることは、間違いなく人生の役に立つが、たぶん儲からない。

 

投資の世界で儲けてる人は、予測が当たっているのではなく、きっと別の理屈があるはずだ。