世相を反映する各種のサービス業がある。
何でも屋と呼ばれたり、便利屋と呼ばれ、依頼されれば犯罪以外は引き受けますというサービスがある。
起源を遡れば万(よろず)屋なんて呼ばれた頃に行き着くのかもしれないが、イメージとしてはサービスというよりも商品の取り扱いの多様さを誇っていたような先入観があり、現代のデパートや量販店やスーパーやコンビニの原型になりそうだ。
今回は商品ではなく、世相を反映するサービスに焦点を当ててみたい。
SNSの登場で、誰でも言いたいことが言えるようになったように感じる一方で、言いたいことが言えずに悶々と悩む人も大勢いるのが現代だ。
言いたいことが言えない人達の姿は、ボ〜ッと生きてるとなかなかその存在に気付けないが、嗅覚の鋭い人が気付いたのか、はたまた困り果てた人がたまたま何でも屋に駆け込んだからかもしれないが、一旦顕在化するとサービス業として成立するものがある。
その一つが、代わりにやってあげるという代行業。
お酒を飲んだ人の車を代わりに運転する代行運転は1963年に富山県で始まったとウィキペディアには書いてあり、その頃は思い立っただけで事業参入できたが現在では公安委員会の認可と二種免許が必要になる警察マターになっている。
現代らしいものには退職代行というものがある。
ブラック企業で働いてると、退職させてくれないという問題が発生することが多いらしいが、企業側の理屈としては人手不足という背景の中で育成のためにかけたコストが無駄になる考えがちなのだ。
一方働いてる側にもそんな事情を知ってか知らずか、退職を申し出ることに後ろめたさを感じているのだ。
退職を申し出ても、「困る」と言われたり、退職の意思が固いと分かると恫喝されたりということはよくあることらしいがこれもブラック企業の特徴なのだろう。
一従業員が退職することに関しては民法上は退職の申し入れから2週間後には自由に辞めれることになっている。
おもしろいのは、退職の申し出という極めてプライベートな出来事を依頼するというニーズがあることだけでなく、この代行という行為は厳密にいうと代理行為なので業務として請負うためには弁護士資格が必要になる。
しかし、弁護士でもなくこの業務を請け負っている業者はたくさんいるが、代理業ではなく仲介業であると主張して行なっている。
法律や社会の盲点にビジネスチャンスがあるということを、新種の代行業が教えてくれる。
2〜3年前から〇〇ハラスメントと言われることを耳にすることが増えた。
不平不満はなんでもハラスメント扱いの対象になり始めた。
良かれと思ってしたアドバイスや愛の鞭のつもりで叱ったことまでがパワハラ扱いされるようになり、挙句に「わたしは褒められて伸びるタイプなので褒めてください」という声が大きくなり始めた。
そうすると、叱り方が分からない、正しい叱り方とはと次々に分からないことが増えるので、叱り方講習会や褒め方講習会が開かれているという話を聞くようになってきた。
講習会だけでなく、新しい何かに関心を持った場合、その入り口にセミナーやサロンと銘打った啓蒙プログラムが準備されることが増えてきた。
独立心を養うようなものでなく、依存心を養うようなプログラムが増えている。
少子高齢化が加速させているのが依存型の代行業なのかもしれない。
似たような情報が溢れる中で、差別化し優位を得ようと確実な依存先を求める一方で、キツイことや苦しいことは要領良く排除したいと願うあまりに取る行動が、似通っているという皮肉が起きている。
代行業を観察してると世の中の動きが見えてくる。
これからも新種の代行業が静かなブームになるだろう。