昨日ラジオ(NHK)を聞いていて、次のニュースを伝えていた。
GDP10~12月期 年率マイナス6.3% 5期ぶりのマイナスに 2020年2月17日
これが1年間続いた場合の年率に換算すると、マイナス6.3%で、5期ぶりにマイナスに転じました。
読むと全く誤解の余地がないのだが、ボケ〜っとラジオを聞いていて耳から音声で入力されると、不思議な理解をしてしまってハッとさせられた。
『5期ぶり』が、わたしの脳内では『ゴキブリ』になってしまい、『ゴキブリに転じました』と聞き取ってしまったのだ。
そしてほんの一瞬だが、脳内ではそれを理解しようと無理やりに、“武漢ではコロナウイルスの患者がゴキブリになってしまった”というストーリーを組み立てようとしていた。
すぐに聞き間違いだとは気付いたが、何をどう間違ったのかはすぐには分からなかった。
正確には5期ぶりとゴキブリは音は同じなので聞いて判断する場合は文脈に頼るしかない、ボケ〜っと聞いていたから起きたことだろうと思ったが、だったら意識して聞いたら聞き間違いは起きないのかに興味が湧いてきた。
わたしが聞いたのは朝9時前のニュースだったのだが、その日の別の時間帯のニュースでも同じニュースを流すはずなので、その時に意識して聞いても聞き間違いが起こるのかを試してみた。
昨日は、同じニュースが何度も流されていた。
そして、すべての時間帯でわたしの耳には5期ぶりはゴキブリとしか聞こえなくなっていた。
そして、もう一つおもしろいことに気付いた。
話してるアナウンサーもおそらくそのことを強く意識してるのだろうということを。
5期ぶりの読み方が微妙に5期とぶりの間に間を設けようとしたりしてることに気付いた。
その様子は、どの読み方が正しいのかを探るようであり、正しい読み方が分からなくなってるようでもあった。
おそらく放送局内でも5期ぶりがゴキブリに聞こえるという指摘があったのだろうと想像できる。
気付いた人には、いつもと違う楽しみ方ができたことだろう。
発音が同じことばで意味が複数存在すればいつ起きても不思議はない。
これとよく似た現象にゲシュタルト崩壊というのがある。
正しい字を書いているのに、間違ってるような気がして、辞書等で正しい字を確認しても、実際に書くとなんだかしっくりこない、そういう時に脳内で起きているのがゲシュタルト崩壊。
ゲシュタルト崩壊という呼び名は知らなくても、経験したことがある人は多いだろう。
ゲシュタルト崩壊が目から入る視覚情報の中でも文字や図形に関して起きるのに対して、耳から入る音声情報には空耳というのがある。
聞き間違いを楽しむ空耳アワーなんてバラエティがあったように、空耳は生活の身近なところにあるものだ。
ゲシュタルト崩壊も空耳や聞き間違いなどの勘違いは、しばらく時間が経過すると自然と解消するので笑い話で終わるからこそ、笑い話として積極活用する文化が生まれる。
生産性や効率を重視することに慣れると、一つのことば(同一の発音)に対して一つの意味を定義するという一物一価が進むようになる。
間違いを楽しむという文化が減ってるような気がするが、これこそが高度に発達した脳のおかげで楽しめることだと思える、AIはたぶんゲシュタルト崩壊も空耳も楽しめないはずだ。