今ではよく耳にするようになったことばにオンデマンドというものがある。
このことばも世間によくある言語明瞭だが意味不明なことばで、現在の使われ方に近い由来を遡ると1990年代のIT業界に行き着き、アウトソーシング(外部委託)に近い意味で、反対語にオンプレミス(≒自社運用、自社内製)が当たるとされてるが、現在の使われ方はここから少し変化している。
GoogleTrendsで検索可能な2004年以降で見てみると、
関連するトピックやキーワードを見るとテレビやドラマや映画の動画配信に関係してそうなものばかり。
上位5つ以外も動画に関係したものばかり。
オンデマンドが普及する前は予め放送される時間が決まっていて、見たい場合にはその放送時間に合わせて見るというメディア側の都合に合わせるスタイルしかなかったのに対して、オンデマンドの場合はメディア側は視聴可能なプログラムを準備し、視聴者は自分の都合に合わせてプログラムの中から選択すれば良いだけで便利になった。
従来のスタイルでは放送時間という今を逃すと見ることができなかったのに対し録画することがオンデマンドの代用として機能していたが、予め録画設定をしておかなければいけないという意味では放送時間と放送内容を事前に把握しておく必要があるので、うっかりしてると録画はできなくなるので、中途半端なオンデマンドだった。
GoogleTrendsでは2007年にピークを示したオンデマンドだが、その後は盛り上がりを示さなかったのに対し、今年3月コロナでの自粛生活が始まると大きく反応が出ていた。
自粛生活でテレビを見る時間が増えた人々がワイドショーや報道番組を見て憂鬱になる人が増えたと言われていたが、そのことが反動として安心して見れるおもしろそうなプログラムを求めてオンデマンドの需要を上げたようにも感じられる。
リアルタイムで見るしかなかった時代の後にビデオが登場しさらにインターネットの登場でオンデマンドは進化したが、その進化が便利とトレードオフさせたのがおもしろさのような気がする。
オンデマンドで見たいものを選ぶというのは、結局見たいものしか見えなくなるというフィルターバブルにつながり、刺激が欲しいのに退屈することにつながる。
便利なものや都合が良いだけのものは、高度な予定調和にしかならないのかもしれない。
オンデマンドが予定調和で奪ったものは一期一会の感動なのかもしれない。
いつでもできることは、今じゃなくてもよいとなるのかもしれない。
少し不便で、少し不満があるくらいの方が達成できた場合の満足度は上がるのかもしれない。
便利なはずなのにかえって退屈を感じてるならばオンデマンドを疑った方が良いかもしれない。