営業や取材などで強引な行動をする場合の象徴として、相手の都合を一切無視して行動することを夜討ち朝駆けという。
待ち伏せの場合もあれば突撃の場合もある。
当然ながらアポイントはない。
ここではたと思ったのが、20世紀ってアポイントは取らないことが多かったなあということだ。
突然訪ねて、相手が不在だと困る場合には前もって電話をかけるなどしていたが、相手の都合を慮ってのことではなく、自分の空振りを恐れての確認だったような気がする。
だから相手が法人ならば、朝9時から夕方5時の間なら空振りはないだろうと考え突然訪問するなど当たり前だった、相手の方も事前にアポイントを求められることに不慣れな人が多かったように思い出される。
突然訪問する、いわゆるアポなしが、当たり前だった時代には夜討ち朝駆けは熱意の現れだと理解され、迷惑だと感じたとしても止められるものだとは思えなかった時代があったことを覚えている。
しかし、少しずつ時代は変化していた。
家庭の玄関先に『訪問販売お断り』というシールが貼られたりするようになった。
その背景にあったのは当初は、『見知らぬ人に家を覗かれたくない』という思いだったように記憶しているし、押し売りを警戒してのものだったとも記憶している。
夜討ち朝駆けや押し売りに対抗するために、アポイントが静かに求められ始めたが、ITやインターネットがない時代だと口コミで伝わる情報にはとても価値があったので、アポイントがないからと一律に断るわけではなく、訪問者の身なりや口調で判断されていたように記憶している。
そして現在、アポイントは当たり前になった。
徐々に変わったはずだが、途中の経過の記憶は曖昧だ。
マナーとしての空気が変わったのだ。
携帯電話が影響してもいそうだ。
他にも変化したことがあるはずだと考えてみた。
アポなし訪問が当たり前の時代には、営業に携わる人はお客は無限にいると思えていたような気がする。
営業は断られることが嫌だが、無限の客がいる中で100人や1000人に断られても大したことないと、気持ち一つでモチベーションの回復を図ることはいくらでもできたような気がする。
しかし、アポイントが必要になると、とても無限の客がいるとは思えなくなってくる。
このようになってくると、不特定多数から特定少数へとターゲットが変化してくるのは当然だ。
つまり、リストや名簿が価値を持つようになるのだ。
今と違い、20世紀の電話帳はとても分厚かった。
誰でも使えるリストが電話帳だったのだ。
有料で各種のリストを売ってる名簿屋が大きな注目を浴びたこともあるが、大元になる名簿データは顧客データをこっそり名簿屋に売るという社員がいるから成り立っていたという背景も無視できない。
21世紀に入ると、詐欺の被害に遭った人のデータがカモリストとして取引されると話題になったこともある。
一度被害にあった人は二度と同じ失敗をしないように感じるが、実際には同じ人が何度も引っかかるらしい。
引き合いに出した事例が詐欺というのもなんだが、攻めの営業を展開したい場合は、現在は不特定多数をターゲットにするというよりも特定少数をターゲットにしてるのだ。
一方で、不特定多数を想定したビジネスの主流はネット上で展開されていて、釣りのように餌を撒いた後は待つだけというスタイルになる。
餌に対しての食いつきが悪い場合は、釣り糸を垂れた場所にそもそも獲物がいないか、餌が悪いか、釣り針のサイズと獲物のサイズの不一致がおきてるなどが想像できる。
このように考えると、ネット上であったとしても、ごくごく一部を除くと、ターゲットの絞り込みは必要になるのだ。
どんな商品やサービスを展開していても、頭で想像するよりもはるかにターゲット顧客は薄い層になってるはずだと思える。
井の中の蛙大海を知らず
この諺と逆のことが起きているのだ。
大海に乗り出してるつもかもしれないが、実は井戸でチャプチャプやってるだけかもしれないのだ。