2018年の箱根駅伝が終わり、青山学院大の4連覇で終わったが、往路の優勝は東洋大だった。
学生が切磋琢磨し合う姿を感じるとともに連覇はそうそう続くものではないだろうなという印象を感じていた。
今年の箱根駅伝の初日である1月2日のレース開始に合わせるようにこんな記事が出た。
箱根駅伝「薄底vs.厚底」靴の知られざる闘い ナイキ驚異のイノベーションが歴史を変える
2017年10月の出雲駅伝。なんと東洋大学と東海大学の学生がヴェイパーフライ4%を履いていたんです。特に、ナイキのサポートを受けている東洋大学は、下級生を中心にしたメンバーのほぼ全員。
しかも、下馬評ではあまり良くなかった東洋大学が、突然活躍しはじめた。
そして、ほかの選手も真似するようになりました。価値観が変わり始めたわけです。箱根駅伝の長距離20kmを59分台で走るために、あの厚底は適した靴なんじゃないのか、と。
面白いのが、優勝候補と言われている青山学院大学は、ほぼアディダスなんですよね。先ほどの三村仁司さんが考えた走り方の靴なんです。そのために泥臭い練習をずっと積み重ねてきてもいます。
青学が「青トレ」という体幹トレーニングによって、故障が減り、継続して練習ができることになったおかげで選手が底上げされ、箱根に勝つようになったように、東洋大は、厚底靴に代表される走り方を会得して、故障せずに長く速く走って勝つという方向に向かっているのかもしれない。
面白いのは、この記事が書かれたのはレース前で、私がこの記事の存在に気付いたのは往路のレースが終了した後だったので、まるで予言的中という感じを受けたことと、ドラマ「陸王」がリアルに展開されてるような臨場感が得られたことだ。
上記の記事のように、東洋大は昨年後半ナイキのシューズを使うまでは下馬評が高くなかったのに、急に頭角を現したのも面白い。
即効性の高いドーピングがやめられないのも無理がないと感じた。
ところで、このシューズの争いを見てると思い出すのは、水泳界の魔法の水着と言われたレーザー・レーサーだ。
レーザー・レーサー(LZR Racer)はイギリスのSPEEDO社が開発した競泳用水着である。2008年に入り、この水着を着用した選手が次々と世界記録を連発した。
2009年7月24日に行われた、国際水泳連盟(FINA)の会議において、2010年より水着素材を布地のみに制限するルールが決定された。
結局、特別な水着は禁止になったことを考えると、特別なシューズもいづれ禁止になるのだろうなと思われる。
技術の進歩を嫌がるというよりも、競技に対する興ざめ感の方が弊害として大きくなるだろうから。
現代の選手に、昔のアスリートが使っていた環境を与えた場合、記録はどのくらい変わるのだろうか?
一般的には長距離走の選手の場合、体重は軽い方が良く、筋肉ですらハンデになると言われる。
箱根駅伝の場合、総合タイムの短縮は、かなり大きな比重でシューズの差が影響していると考えられる。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/箱根駅伝の記録一覧
総合タイムの変遷
コースの変遷はあるものの、一定の目安となるタイムを初めて突破した歴史は以下の通り。
- 15時間突破…14時間39分01秒4/5:明治大学 第2回(1921年)
- 14時間突破…13時間54分56秒:明治大学 第9回(1928年)
- 13時間突破…12時間47分53秒:早稲田大学 第14回(1933年)
- 12時間突破…11時間59分33秒:中央大学 第36回(1960年)
- 11時間突破…10時間59分13秒:山梨学院大学 第70回(1994年)
- 10時間55分突破…10時間51分36秒 : 東洋大学 第88回(2012年)
- 10時間50分突破…10時間49分27秒:青山学院大学 第91回(2015年)
コースの変更による若干の距離の違いを別にすれば、タイムに影響を与える要素は、天候や路面状態や身体能力の違いとなり、身体能力にシューズが大きく影響を与えるだろうことが想像できる。
たかがシューズ、されどシューズ。
スポーツ専門店のランニングシューズのコーナーに行くと、フルマラソンでサブ3(3時間切り)用やサブ4(4時間切り)用と銘打ったシューズが売られている。
トータルの記録は進歩してるが、果たして現代人の中身はどれほど進歩してるのだろうか?
ドーピングを利用するのはずるい事なのか、それとも賢明なる判断なのか?
少し前だったら、迷わずズルイと言えたが、最近は選択は常にトレードオフを伴うと言う考えが染み付いたので、大いに悩んでしまうところだ。
今年の箱根駅伝の復路では、青山学院大が東洋大を寄せ付けず、総合優勝を飾ったが、東洋大をはじめとしたナイキのシューズ利用者の準備不足が原因で勝てなかったとも言える。
ドーピングは有利かもしれないが、やれば勝てるわけではない。
ランニング競技は、ランナーの競い合いだと思っていたが、実はいつのまにかシューズの争いになっていたかもしれない。
おそらく、全ての分野で、気が付いたら戦い方が違っていたと言うことが起きそうだ、そしてビジネスの場では既に戦い方が変わってきているし、ビジネスとビジネス以外の境界が曖昧になりだしている。