伝統芸能の世界では、例えば歌舞伎の世界では、そもそも世襲で入り口が極端に狭い。
そういう世襲の世界に生まれた子供は、幼少期からその親が受けたのと同じ教育が10年、20年と施されるということを繰り返している。
一見、個性やオリジナリティを重視するという最近の考えの正反対のように見えるが、実際にそうやって育った人が大人になったら個性やオリジナリティはどうなるだろうか。
天皇家や皇室の人にも当てはまるかもしれないが、同じように育てられても明確に違いがわかる。
つまり、ちゃんと個性があり、オリジナリティがあるのだ。
ものまね芸でもそうだ、外見やしゃべりを究極まで似せようとしても、同じになんかならない。
こういうことを考えていると不思議に思うのが、個性やオリジナリティに拘る人が、一生懸命「違いを示すこと」でオリジナリティを主張しているのに、受け手の我々の目には”なんか前にも見たことあるな”と映ったりすることがあることだ。
同じことを同じようにひたすら繰り返すのに、違いが宿ることがあるかと思えば、一方ではひたすら違うことを目指すのに同じ印象しか与えないということがある。
漫才などで顕著なのが、オリジナルに拘った創作ネタ。
ヒットして一気に知名度が上がっても、次が出せず一発屋として消えていく。
【懐かしい!?】今まで誕生して消えていった一発屋芸人・一世風靡した有名人・歌手・動物たちのまとめ
オリジナリティや個性をネタで表現しようとする人は大抵消えてるようだ。
生き残る人は、一過性のネタではなく、普遍とまでは言えなくても連続性や継続性が保ちやすい分野を見つけている。
連続性や継続性が得やすいネタに地元ネタというのがある。
「福岡はお笑いの本場」説は本当か 吉本進出から28年 “起業家魂”で挑む若手芸人たち
東京のキー局ではビッグスリー(タモリ、ビートたけし、明石家さんま)に続き、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンが台頭。
90年代に入ると「タモリのボキャブラ天国」「進め!電波少年」「めちゃ×2イケてるッ」などお笑い芸人“量産”の時代へ突入し、2000年以降には「エンタの神様」「お笑いオンエアバトル」などのネタ見せ番組が大ブレーク。芸風が多様化する中、腕を磨く無名の芸人に感情移入して応援するファンも徐々に増えた。
一方、地方民放ではキー局に依存しない番組制作を目指す風潮が強まる中、身近なお笑い芸人へのニーズが高まっていたという。
スポーツの競争のような誰の目にも明らかな状態で決着がつくわけではないことが残酷でもある。
東京のキー局で通用するということは、野球に例えればプロ野球だろう。
そこでは、入団できたら一軍に上がるための競争があり、一軍に上がれたら、レギューラーになるための競争があり、レギュラーになったらチームの成績と個人の成績の競争がある。
ネタで勝負してる新人のファンには、高校野球のファンのような心理が働いているかもしれない。
芸能の世界でも、スポーツの世界でも、そしてビジネスの世界でもファンの獲得を目指して皆頑張っている。
そして、少しファンが増えたら更に増やしたいと思うが、ファンの側は思い通りには動いてくれない。
バカリズムが語る、売れないアイドルを応援したがるファンの矛盾した心理
お笑い芸人のバカリズムが、売れないアイドルを応援しているファンの、「売れて欲しいけど、売れてほしくない」という矛盾した心理について語っていた。
お笑いファンの人でも、いると思うんですよ。チラホラ、テレビに出てる頃は、そのチラホラのテレビ出演を「絶対に観ます」とか言っていたけど、ゴールデンタイムに出たり、ファンの人たちの数だとか、知名度が上がってくると、「変わっちゃったな」とか言いたがる、みたいなね。
実際に、個性やオリジナリティを感じる人はどんな人だろうか。
「個性、オリジナリティ、有名人」で検索すると、芸能人がいっぱい出てくるのは当然だろう。
特徴は、ルックスやファッションという外見がその印象を与えているということだ。
ついでに言うと、良い意味でマイペースを持ってそうなこと。
やりたいからやってる、好きだからやってる、その積み重ねが勝手に個性があると言われたり、オリジナリティがあると言われてるように見える。
考え方や行動は時間の経過で変わるかもしれないが、動機が同じならば、その積み重ねは個性やオリジナリティとなるのだろう。
個性やオリジナリティは生き様に通じるが、それを評価するのは他人だから意図して作り上げようとしても全く違ったものになるだろう。
個性やオリジナリティが求められるのは、アンチ予定調和なのだろうが、それを産み出すことに繋がるのは、好きなことや興味のあることをマイペースで続けることによってだろう。
先日次男坊の通う中学校で講演を頼まれたのだが、
後日カミさんがプリントを取りに行った時、先生方が特に関心を寄せたのが、
「個性って何ですか?」と生徒から問われた時の俺の答えだったとのこと。
「ご主人の講演は素晴らしかったです」
「あの人、落語家ですから。口から出まかせですからw」
と答えたカミさんのセリフこそ俺の個性だ。
やはり談志という天才に振り回され続けてよかったと思う。それが俺の「個性」となった。
個性やオリジナリティが評価されるというチャンスは、きっと自分が思ってるのとは違う方向からやって来るのだろう。