タイトルやキャッチフレーズに『〇〇の△△』のように本来は結びつきにくい単語を組み合わせることで個性や想いがより鮮明に打ち出せることがある。
ビジネスに限らず遊びや趣味の世界でも、個性の競い合いが繰り広げられてるが、純粋な違いはもはや存在しないくらい同質感(間)の競争が展開されている。
そういう場合、質の差別化よりもネーミングセンスの差別化の方が功を奏しやすいかもしれない。
〇〇の△△という表現は、教科書によく見られた表現で例を上げると、
・〇〇の定理(法則)
・〇〇(地名)の△△(建物名)
などがある。
このような場合は、唯一であることを表現してるように感じるが、最近料理番組で見る料理名のように素材の名前を「の」でつなぐことでますます意味不明が強調される場合もある。
Twitter上には、いろんな人に散々パクツイされてるメニュー名に「森の妖精のパスタ」というのがあるが、おしゃれな高級な料理店のメニューのネーミングにも「の」でつなぐものが多そうだ。
中身よりもネーミングの方が重要になっているかもしれない。
商品だけでなく人間も、中身よりも見栄え(見映え)や第一印象の方が重要かもしれない。
中身がどうでも良いという意味ではなく、中身が問われるのは覚えてもらった後の話なので、まづは覚えてもらうことが重要になる。
だからこそ商標登録は大事になる。
中身や技術にこだわる気持ちが強いと特許など強い権利にこだわるのだろうが、多くのビジネスは似たり寄ったりの中で競い合っているので、印象に残りやすかったり、言いやすい(呼びやすい)名称はそれだけで武器になる。
そんなネーミングの世界には、一つ一つはありふれた単語であっても組み合わせることで新しい世界観が表現できる場合がある。
そんなネーミングの中でも、シンプルに『の』でつなぐものに焦点を当ててみた。
飲食の業界に『俺の〇〇』というのがある。
俺のフレンチ、俺のイタリアン、などというネーミングの店舗を多数展開している会社の名前が『俺の株式会社』。
最近テレビCMでもよく見る「いきなりステーキ」も「の」でつなぐ手法と共通するメッセージ性の強さが感じられる。
ネーミングにこだわるという言い方をすると、浮ついた地に足がつかない印象があるが、これを知財戦略と呼ぶと一気に高度なビジネス論になってくる。
知財戦略のベースになるのは、知的財産権。
知的財産権とは、
・特許権
・実用新案権
・意匠権
・商標権
・著作権
を指すことが多いが、これらは全て『俺(わたし)の』を主張するためのものだと言える。
『俺の株式会社』という名称を知った時、最初「フンッ」と鼻で笑う思いがあったが、如何に凄いことをやっていたかが改めて分かる。
テレビ東京の「ガイアの夜明け」のチーフプロデューサー大久保直和さんは著書「テレ東のつくり方」の中で番組タイトルが決まらない日々の葛藤を解決したのが「の」だったと述懐している。
葛藤が生まれたのは新番組のタイトル候補として上がっていた「ガイア」派と「夜明け前」派が対立して折り合う気配が全く無かったからだが、ひょんな事からじゃあ両方つないでみようとなり、つないだところ両派が瞬時に「それは良い」となり、語呂の良さから「前」はいらないねとあっさり決まったらしい。
今日のお題は「〇〇の△△」だったが、日本ではお菓子や食べ物の名前の定番でもある。
きのこの山
たけのこの里
コアラのマーチ
パイの実
みどりのたぬき
など。
「〇〇の△△」ってフランス語で言うところの「△△de〇〇」となる。
知財戦略のヒントは、飲食業界やフランス語的なネーミングに隠れてるかもしれない。