何かと揶揄されることが多い人材派遣業の最大手のパソナが淡路島に本社を移転するという話が出てきた。
報道等で表に出てくる動機は東京一極集中の弊害回避で、コロナで余儀なくされたリモートワークの実用化がキッカケのようにも思える。
これに対して世間の声は、実態は大規模リストラなのではという声が上がっているところがいかにも人材派遣業らしい。
人材派遣業は儲かってるようなイメージがあるが、不景気になると真っ先に重荷になるのが人件費であり、その契約が簡単に解除できるとすれば、人材派遣の現状は厳しいことが想像に難くない。
背景に目を向けると、パソナの本社移転には現状及び近未来を見据えての将来展望に対する付け焼き刃が垣間見える。
本社移転と聞いて私が思い出すことは二つある。
一つは、大阪本社(関西本社)の大企業が軒並み本社を東京に移転し始めた歴史だ。
大阪から東京への本社移転の動きは1960年代から起きていたとされるが、当初は複数本社制を採り東京本社、大阪本社が存在し、創業時の本社を創業本社などと呼んでいた。
2000年の時点では、資本金100億円以上の大阪企業の45%が複数本社制を導入しており、うち大阪に主たる本社機能を置く企業が7割、東京に主たる本社機能を置く企業が3割だった、とされる。
<参考>
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-2593.html
21世紀に入ると複数本社制を採用する企業で海外取引が多い企業や株価や投資家を意識する企業は否応なく東京本社が実質本社になっていった。
このような動き以外に情報の発信地としての比重の高まりもあり、あらゆる意味で東京への一極集中を加速させた。
そんな流れに疑問を持たせたのが東日本大震災。
本社移転に関して思い出す二つ目は以下の流れで起きたことだった。
震災被災企業、12%が本社移転 東北大調べ 2012/10/1
地震や津波などで直接的な被害を受けた4545社のうち、震災後に本社を移転したか移転する予定と答えた企業は12%にあたる559社に達した。主要事業所を移転済み・移転予定と答えた企業の比率も、回答した被災企業の11%にあたる238社にのぼった。
さらに、
揺れの中心は東北だったにも関わらず、首都圏で東日本大震災を受けた人々は、『ああ、これが来るぞ来るぞと言われていた関東大震災か』と思ったという。
東日本大震災がきっかけで、リスクヘッジという視点が具体化したのだ。
本当の関東大震災が発生したらこんなものではないはずだという恐怖が具体的になったからだ。
その結果、
九州・沖縄への本社移転、東京・神奈川から30社 震災で大幅増 2012/3/1
帝国データバンク福岡支店は15日、九州・沖縄の企業の本社移転に関する調査結果を発表した。2011年に東京から九州・沖縄に本社を移した企業は前の年に比べ60%増の24社、神奈川からは50%増の6社に上った。東日本大震災を受け、首都圏から九州・沖縄に移転してくる企業動向が鮮明になった。
本社移転というのは、国に例えるなら遷都。
東日本大震災以降、遷都は首都機能移転とも呼ばれ、時々話題に上がるようになった。
遷都論には、リスヘッジもあるが、一極集中の格差や弊害(=地方の僻みや妬みや嘆き)の是正が付き纏う。
本社移転というキーワードでつらつらと書き連ねたが、不思議なことにその結果リストラとリスクヘッジが紙一重というかコインの裏と表のような関係に思えるようになってきた。