『日本(人)スゲー』と日本を礼賛するテレビ番組が一時期増えていたが、そういう番組に『腐っても鯛』の悲しいプライドを感じたり、若者にとってはもはやギャグとしか思えないかもしれないが、昔日本はジャパンアズナンバーワンと世界から思われていた時期があったのだ。
わたしがジャパンアズナンバーワンを知ったのは80年代の半ばだったと記憶してるが、最初に言われたのは1979年で、言ったのはこの方だ。
エズラ・ボーゲル氏死去 ジャパン・アズ・ナンバーワン 日本経済新聞 2020年12月21日
日本の高度経済成長は年功序列の社会制度や勤勉さが要因だと分析した1979年のベストセラー「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で知られる米社会学者で、ハーバード大名誉教授のエズラ・ボーゲルさんが12月20日、東部マサチューセッツ州ケンブリッジの病院で死去した。90歳だった。
日本の急成長に危機感を抱いたアメリカや世界が、日本の良いところを研究すべきではないかと考えていたのだ。
しかし、日本はそれをアメリカや世界に褒められていると勘違いしたのだということが、今になって振り返るとよくわかる。
日本には歌舞伎などの伝統芸能の世界に誉め殺しという文化がある。
台頭する新人を褒めることで油断させ、芸を鈍らせることで伸びる芽を摘む、という文化だ。
一定以上の年齢の方にとっては、政治の世界のことばとして記憶してる方も多いはずだ。
印象としての日本のピークはバブル景気の頃で、その後失われた30年に突入するのだが、真のピークが1979年でバブル期まで惰性が続いたと考える方が的を射てそうだ。
ジャパンアズナンバーワン() https://t.co/fyHs7ochcS pic.twitter.com/X7lGeLvd8Q
— ツェリ子🐆白豹 (@huit8elimi250v) 2020年12月21日
残念ながら、世界は中国や北朝鮮を警戒することはあっても日本を警戒することはなくなってしまった、恐るるに足らずな相手なのだ。
自民党が憲法改正に拘り、軍備拡張へ向かいたい理由が、世界に存在感を示すためには北朝鮮的なゲリラ脅威を世界に示すしかないとでも考えてるのかもしれないと思えてくる。
エズラ・ボーゲル氏が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を書いたことで日本は誉め殺しの墓穴に陥った。
そんなエズラ・ボーゲル氏が亡くなられた。
氏の主張をわたしなりに解釈すると、日本の強さは村社会的な連帯感の強さのような同調圧力にある、ということになる。
今の日本からは、かつてのような精神的な呪縛になる村は消えつつあるのだが、同調圧力だけが亡霊のように生き長らえている。
村の代わりに、漠然とした世間の空気に縛られているのだ。
かつて存在した村は、成員の面倒を見てくれたが、世間の空気は面倒を見てくれることはない。
見返りのない同調圧力に従うのはなぜなのだろうか?
同調圧力の強さゆえに台頭した日本は誉め殺しでダウンしたが、おもしろいことに、全世界的なコロナの流行は、マスクや個人の行動を巡って新たな同調圧力を作り出している。
同調圧力など文化的に持ち合わせてなかったような文化圏でも、同調圧力は醸成されている。
同調圧力の強さゆえに世界から取り残されてるかに見えた日本だが、コロナがきっかけで世界が同調圧力に目覚めたとすれば、日本にもチャンスが到来するかもしれない。