日本では社会に出る前の時期を、一般的には大学生時代を指して、モラトリアムと呼ぶことが多い。
モラトリアムとは、一時停止や猶予という訳語が当てはめられる。
対義語としては、持続するという意味で動詞continueの名詞(複数ある)が設定される。
これは、モラトリアムが一時的で、どちらかというと期間限定というニュアンスが強いからだが、21世紀に入ってからはモラトリアムに『報われない、実らない』というニュアンスを感じることが増えたように感じる。
日本だけではなく、2010年台の半ば頃からはアメリカでもアメリカンドリームが無くなったと言われるようになったことからすると、モラトリアムにcontinueの意味合いが加わったことになる。
一般的にはモラトリアムは良いことだとは思われないが、飛躍の可能性を生んだことも事実だし、反抗期と同じで必要だと考えることもできる。
モラトリアムをどう過ごすかも大事だが、現代ではモラトリアムにも大きな格差がある。
恵まれたモラトリアムは、社会的な成功とほぼ同義の場合も少なくない一方で、程度がどうであれモラトリアムが許容される人は幸せで、どこをどうすればモラトリアムが湧いてくるのか分からないという人だって少なくないのだ。
モラトリアムの時期とは、決して満足できる状態ではないが、どうにかやり繰りがつくから成立することでもある。
モラトリアムの時期が決められた期間ではなく、いつ終わるかも分からないとすれば、不満を抱えながらもどうにかやり繰りをつけてる人や、自分は大して頑張ってないが環境のおかげでどうにかやり繰りがついてる人は、不明だとはいえ意識せざるを得ないのがモラトリアムのタイムリミットだ。
タイムリミットが意味するのは死だ。
命を失う死とは限らない。
生活における何かが持続しなくなり失われるという意味での死だ。
自分の意志と無関係に迫ってくるモラトリアムのタイムリミットから逃げるために自ら自殺を選択する人もいるかもしれない。
1999年、当時21歳の椎名林檎が10代の頃に書き溜めた曲で作ったアルバム『無罪モラトリアム』が170万枚を越える大ヒット。
ギリギリ20世紀に歌われたモラトリアムはやっぱり期間限定が前提だったが、21世紀に入ってからは期間不明になっている。
有名人でそれなりの成功者も期間不明のモラトリアムの悩みを抱えているのだ。
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生涯モラトリアム、そういうことはもう珍しくないのだ。
生涯続くのだからタイムリミットなど気にするだけ無駄なのだ。